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家庭薬膳アドバイザー/植山 美保さん

植山 美保さん
「薬膳ライフの楽しみ」
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植山 美保さん/家庭薬膳アドバイザー
女子栄養短期大学卒業後、病院の栄養士を経てイスクラ産業(株)に入社、中医営養学、薬膳料理の研究に進む。退社後も中医営養学と近代栄養学の両面からの目と身近な食材を使った薬膳の普及に努め、講習会、講演、テレビ、雑誌でも活動。著書「はじめての薬膳クッキング」「超かんたん家庭薬膳レシピ138」「おべんとうのために考えたかんたん薬膳クッキング」など。


食べ物の五味

 春らんまん…この季節になると、祖母が作ってくれていたちらし寿司を思い出します。昆布で炊いた少し硬めのご飯を半切りに移し、合わせ酢を回しかけ、しゃもじで切るように手際良く混ぜていく。その横でうちわで扇いで冷ますのが私の役割でした。

 色とりどりの、そして、いろいろな味が楽しいちらし寿司は、あっという間におなかの中へ。料理上手で、もてなし上手な祖母の料理が大好きでした。この「季節ごとの行事食」や「いろいろな味や色」を毎日の食事で心掛けることの大切さを、薬膳を学んでから改めて知ることになりました。

 薬膳は、中医学(中国伝統医学)の理論を基にして病気予防や治療、日常の健康維持などを「目的」とする料理や食養生法のことです。中医学は病気を治すためだけのものではなく、実は病気にならないようにするための医学でもあります。だから健康維持のための養生の知識が満載。薬膳もその中の1つで、毎日の生活の中で、その知識を知恵に変えて生かしてこそ意味があるのだと思います。

 中医学の基本となる考え方の1つに、「全体をまるごと見てバランスをとる」ということがあります。身体だけでなく、季節や気候、生活している環境、習慣、ココロの状態などを全体的にとらえて対応します。

 例えば、暑い夏に冷奴を食べて、体内の余分な熱を冷ましたり、真夏でもクーラーが効きすぎて身体が冷えていれば、湯豆腐にして薬味のネギや生姜をたっぷりのせるとか。食べ物も栄養素や有効成分のみに目を向けず、1つの生命体としての生命力に着目します。自然の摂理に沿って収穫される旬の食べ物はもちろんのこと、成長するために必要なものがギュッとつまっている種子類や豆類のパワーの意味もここにあります。

 バランスをとるためには、知っておくと便利なことがいくつかあります。

 まず、食べ物は、「身体を温めるもの」「身体を冷やすもの」「そのどちらにも偏らない穏やかなもの」の3つの性質に分けられます。身体を冷やす食材でも、温める食材を多めに組み合わせたり、加熱調理したりすることで、全体としての冷やす作用は緩和されます。大根は生だと体を冷やす性質があるので、暑い時には生の大根のサラダがおすすめです。寒い冬はふろふき大根にして、辛子を添えて食べると身体がポカポカ温まりますね。

 さらに、食べ物の味、色、香りも大切な要素です。

 食べ物には大きく分けて5つの味、酸・苦・甘・辛・鹹(塩からい)があり、それぞれ特有のパワーがあるとされています。摂っていない味はないか、1つの味に偏りすぎていないかなどにも気をつけます。「色」も同じで、緑・赤・黄・白・黒の「5色」を基本に、彩り豊かな食卓はバランスの良さにつながります。

 香りは食欲を増進させるだけではなく、気や血、水の流れを促進し、リラックス、リフレッシュ効果もあります。

ニラとえびのスープ
ニラとえびのスープ

 これらの知識をどんなふうに利用するかというと、冷えが気になる時は温めることだけでなく、香り野菜や辛味のもので、冷えて滞りがちな気や血の流れを良くすることも大切です(例えば「ニラとえびのスープ」)。またイライラして目が充血する時は、体の熱を冷ますものや苦味のあるものを利用します。セロリとじゃこをゴマ油でさっと炒め、しょうゆで味を調え鰹節と和えた「セロリのさっと炒め」を。  

セロリのさっと炒め
セロリのさっと炒め

 うつうつとして、ため息が多い時は、香りの強い食材で気の流れを良くし、甘味で気持ちを緩めるために、柑橘系の皮のジャムを紅茶に入れてゆっくりと味わう。疲れているなぁと感じたら、まるごと食材のゴマや松の実と桜えびをふりかけにして、雑穀ご飯にパラリ。

 こんなふうに、食べ物のパワーを知り、自分の身体にあった調理法や組み合わせを食べることが薬膳ライフのだいご味であり、そんな積み重ねが、健康で活力のある毎日へとつながっていきます。また伝統的に受け継がれ食されてきた行事食を薬膳の見方でたずねてみると、自然とともに共存して、元気に生きていくための先人の深い知恵に触れることができることでしょう。

 この出会いをきっかけに、薬膳に少しでも興味を持っていただけたなら、こんなうれしいことはありません。



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