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野菜ソムリエ/KAORUさん

「生産者と生活者の“架け橋”として社会に貢献」 |
![]() KAORUさん/野菜ソムリエ |
野菜ソムリエとは?
「野菜ソムリエ」とは、野菜や果物の知識を持ち、その魅力を伝えるスペシャリストのこと。
日本野菜ソムリエ協会が認定する資格で、2012年2月現在、累計受講者数は4万2000人を超える。協会が創立され、昨年8月で満10年。今では全国で養成講座が開かれている。
受講後、試験に合格すると、野菜ソムリエになることができる。野菜や果物の知識を習得し、自らの食生活をより楽しんだり、家族の健康管理に役立てたり、仕事のスキルアップや転職に活用する方々も多い。
その中で私は野菜ソムリエの初代認定者として、認知度が低いときから活動を続けている。
野菜ソムリエになったわけ
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講座風景 |
野菜ソムリエがまだ世の中に認知されていない時代に、なぜ受講したのかとよく聞かれる。
理由は、身近にある野菜や果物をもっと知りたかったからである。その単純な目的だけで受講を決めた。
当時はこの資格を取得しても、それが仕事につながるとは想像もしていなかった。もちろん前例もなく、生産、流通、歴史、時事、調理などについて幅広く学ぶ時間は、毎回驚きの連続だった。
私は長野県出身で、幼いころから食卓には地元で採れた旬の野菜や果物が豊富に並んでいた。大学入学をきっかけに東京で一人暮らしを始め、近所のスーパーで購入した野菜を口にし、大きな衝撃を受けた。
同じ野菜でも、見た目や味が違い、長野で食べていた新鮮で力強い野菜とは全く異なるものだったからだ。今まで当たり前だった自然の恵みに改めて感謝した。
今振り返ってみると、そのことが野菜に興味を持つようになったきっかけであったと思う。
資格取得後の変化
以前は知識がなくても、野菜や果物をおいしく食べていた。しかし、さまざまなことを知ってから食べると、今まで気づかなかった発見や感動があり、感謝の気持ちもより強くなった。食の情報を得たことで、日常生活でも重要な食が充実し、食材と触れ合う喜びを日々感じることにもつながっていった。
さらに私生活だけではなく、仕事の面でも大きな変化が訪れた。もともとラジオ局で報道キャスターを務めていた私は、当初転職や仕事への展開などは全く想定していなかったが、資格取得後はメディア出演や講演会のご依頼を頂き、野菜ソムリエとしての活動を自然の流れで開始。仕事の幅は依頼とともにどんどん広がり、いつの間にかそれが私の本職へと変わっていった。
世の中では野菜や果物の情報を必要としている方々がたくさんいるという現実に気がつき、情報発信者として食に真剣に向かい合うこととなった。私が感じた野菜や果物の魅力や感動を言葉にして伝えること。生産者と生活者の架け橋になること。野菜ソムリエとしての活動の軸は何年たった今でもぶれることはない。
野菜・果物の魅力
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色とりどりの野菜たち |
野菜や果物は体に良く、栄養が豊富、美容に最適な食材…。しかしそれ以外にも、実はたくさんの魅力を秘めている存在である。
旬があり、季節の移り変わりや気候の変化に気づくことができる。地域に根付いた伝統野菜が歴史や文化を教えてくれる。また海外の食文化をその国の野菜から知ることができたり、世界で新しい品種が続々と登場したりと、取り巻く環境も目まぐるしく更新されていく。
身近にある野菜や果物であるが、意識的によく見つめ直してみると、実はそこから発見、感動を得ることができるのだ。発見や感動がある日常はとても刺激的で、毎日の充実した食生活の積み重ねは、豊かな人生につながると言っても過言ではない。
野菜・果物は人間と同様に生きていて、とても個性的である。味、大きさ、形、育った環境、現在の状態などそれぞれが異なる要素を持ち、一つとして同じものは存在しない。生きているから変化があり、決まり切っていない。だからこそ、そこから得られる感動が大きい。
干し野菜との出会い
野菜のおいしさをより楽しむために、おすすめしたいのが干し野菜である。
干し野菜というと、切干大根や干し椎茸などの乾物を思い浮かべる方も多いかもしれないが、自分で作る干し野菜はそれとは異なる。生野菜と乾物のちょうど中間、セミドライの状態。お店では購入することができないセミドライの野菜は、シャキッとした食感ともちっとした弾力、半干しにすることで得られる凝縮したうまみと甘みが味わえる。きっと干し野菜ならではの初めてのおいしさにびっくりするだろう。
また自宅で残り野菜をうまく活用する方法でもあり、皮や葉など普段は捨てがちな部分を無駄なくおいしく食べる魔法の技でもある。
作り方は簡単。まず野菜をよく洗い、皮ごと食べやすく切る。そしてザルに並べて天日で干す。表面が乾燥して縮み、しんなりしたら完成。炒め物や揚げ物、煮物、漬物、和え物、どんな料理にも活用できる。
ポイントは日差しがあり、カラッと晴れた風通しが良い場所に干すこと。天気の良い日なら半日でできあがる。布団を干すのと同じで、日が落ちてきたら湿気を吸わないうちに取り込む。風が強い日やベランダや庭がない場合は、日当たりのよい室内や窓辺で干すことも可能。まずは週末を利用して、冷蔵庫にある残り野菜を少しずつ切って並べて干してみてはいかが?
干し野菜は、ミックス干し野菜炒めやピクルスに簡単にアレンジできる。少ない調味料で味がよく染み、短時間でカラッと調理することができる。
またお弁当に入れて時間が経っても水分で味や食感が変わってしまうこともない。今までには出会えなかった感動の食感が楽しめる。
干し野菜の魅力をメディアで紹介していたところ、レシピ本出版のお話を頂き、2010年に1冊の書籍にまとめた。おかげさまで大変な反響を頂いている。
干し野菜ブームも到来し、かわいらしい干し野菜ネットや家庭用の野菜乾燥器まで発売されるようになった。食育の現場や食品メーカー、農産物加工に力を入れる自治体からも関心が高く、ますます干し野菜の魅力が高まる気配を感じている。
手軽に楽しく野菜を食べる
野菜や果物を毎日の食事の中に取り入れたいけれど、サラダや炒め物ばかりでは飽きてしまう、忙しい生活の中でもっと手軽に食べられる方法が知りたい…と感じている方々は多いだろう。
そこで、その悩みを何とか解決したいと形にしたのが野菜をたっぷり食べられるサンドイッチのレシピ本である。2011年に出版したサンドイッチレシピは、お弁当ブームにも合わせて手軽に持ち歩けるものばかり。大好きな野菜をたっぷり挟んだ栄養満点のサンドイッチは、忙しいOLや主婦、子どもでも楽しく簡単に作れるとご好評を頂いている。
パンをお皿=プレートと考えて、そこに旬の野菜や具材を盛り合わせていく作業は、料理というより組み立てて遊ぶパズルの感覚だ。調理は面倒なものではなく、楽しむものというメッセージもこの本を通して伝えたかったことである。
野菜の効能や選び方、保存方法なども掲載し、サンドイッチを作りながら野菜の基礎知識も身に付けられるように工夫している。朝食やおやつに、また手作りランチに、ヘルシーでボリューム満点の野菜サンドを取り入れて、栄養バランスの取れた食生活を送ってほしい…そんな私の思いを詰め込んだおすすめのレシピばかりだ。
野菜は健康のためだけに嫌々食べるものではなく、本来は食生活を楽しむためのツールであってほしい。楽しくおいしく食べていたら、自然と健康や美が手に入ったという流れが、自然で素敵だ。
皆さまも身近にある野菜や果物と向き合い、コミュニケーションをとって、上手にお付き合いをしてみると、きっと素晴らしい魅力に出会えるだろう。
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