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マンドリン演奏家/伊丹 典子さん

マンドリン演奏家/伊丹 典子
「マンドリンが奏でる無限の世界」
Profile

伊丹 典子/マンドリン演奏家
1994年よりソリストとしてリサイタル、コンサートツアー、CDリリースなど国内外で幅広く活動。ミヒャエル・トレスター、福田進一など国際的なアーティストと共演。演奏を通しての社会福祉貢献にも力を注いでいる。各種メディアに多数紹介。日本マンドリン連盟会員。「伊丹典子マンドリンアカデミア」主宰。
http://www16.ocn.ne.jp/~noriko/



 マンドリンは心の琴線に触れる大変美しい音色を持っています。

 私が生まれて初めてその音を聴いた時、たくさんの星が煌くようなイメージに包まれたことが忘れられません。弦が震えて奏でられるその響きは、人の喜びや悲しみといった心のさまざまな表情を映し出します。

 マンドリンは、17世紀にイタリアで生まれた弦楽器です。丸い胴を持つ、小さな愛らしい形をしており、べっ甲などで作られたピックでスチール弦をはじいて演奏します。

 ヘンデルやモーツァルト、ベートーヴェンなどのクラシックの作曲家もマンドリンを使った曲を作っています。ヴィヴァルディの『マンドリン協奏曲ハ長調』はダスティン・ホフマン主演の映画『クレイマー・クレイマー』やTVコマーシャルにも使われています。マーラーやレスピーギ、ストラビンスキーなど近代の作曲家も交響曲の中にマンドリンを使用しています。

 日本に入ってきたのは明治30年代で、当時の学識者、文化人に大いに愛好され、合奏団が各地に生まれました。作家の里見弴、詩人の萩原朔太郎、画家の竹久夢二などもマンドリンの愛好者として知られています。

伊丹典子と行くイタリアマンドリンの旅(マンドリン工房にて)

伊丹典子と行くイタリアマンドリンの旅
(マンドリン工房にて)

古楽器オルガネットとの演奏

古楽器オルガネットとの演奏を

ペルシャの楽器サントゥールやトンバクとの演奏

ペルシャの楽器サントゥールや
トンバクとの演奏

マンドリンの演奏姿

マンドリンの演奏姿


 マンドリンといえば合奏で弾かれることが多いのですが、独奏は1枚のピックで複数の音をつくり出す無伴奏奏法をはじめ、多彩なテクニックを駆使して演奏します。

 私がよく弾く『幻想曲 桜』(縄田政次作曲)は、日本の古謡「桜」をモチーフにアレンジした華やかな曲です。まるで魔法のように、ピック一枚でさまざまな音を同時に奏で、1人で弾いているとは思えない音の重なりが繰り広げられるため、いつもどうやって演奏しているのかと質問責めにあいます。無伴奏曲の世界はマンドリン音楽の1つの可能性を示すもので、ぜひ多くの方に聴いていただきたいです。

 私はマンドリンのクラシック楽器としての位置付けを確立し、愛好者だけでなく、一般の方にその魅力を伝えたいという思いで活動しています。

 マンドリンのために作られたオリジナル曲はたくさんあるのですが、一般の方になじみのない曲がほとんどで、どうしても関係者や愛好者だけが集う演奏会になりがちです。ですから私は一般の方におなじみの曲(歌曲、ポピュラー、歌謡曲、一般のクラシック曲など)を演奏し、まずマンドリンの音色に親しんでいただき、音の美しさや表現力により、ほかの楽器にはないマンドリンの魅力に触れていただくように努めています。

 同時にオリジナル曲も演奏して、その素晴らしさを分かってもらうようにしています。

 そして聴いていただく機会を増やすために、よく知られた曲にコンピュータミュージックで自分独自の伴奏を作成し、さまざまな所で1人でも手軽に演奏できるようにしました。

 その成果が実って、テレビ、ラジオ、イベントやサロンコンサートなど多くの場で、マンドリンに全く縁のなかった人にもずいぶん演奏を聴いていただけるようになりました。

 さらに私が取り組んでいることは、マンドリンの新しい可能性を探ることです。マンドリンの曲はマンドリン同士の合奏や、ピアノやギター伴奏で構成されていることがほとんどです。いろいろな楽器と演奏すればマンドリンの魅力がもっと広がるのではと思い、ジャンルや国を超えた楽器とのコラボレーションに挑戦してきました。

 今までに共演した楽器はチェンバロ、リュート、声楽、ハープ、オカリーナ、フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、打楽器などの西洋楽器。さらに箏や津軽三味線などの邦楽器。変わったところでペルシャの伝統楽器サントゥール(ピアノの祖先)やトンバク(打楽器)、ヨーロッパ中世の古楽器オルガネット(携帯オルガン)なども。楽器や音階の違いによる限界や共演の難しさは、工夫でしのぎました。その結果、今までにないマンドリンの世界を楽しんでいただけたと感じています。

 また国を超えた演奏家との交流は、文化や言語の違いを超えて、心のつながりを生み、多くのものを残してくれました。ペルシャの女性演奏家には、手作りのペルシャ料理をごちそうになり、文化や生活の話題で話が弾みました。またオルガネット奏者のイタリアの青年演奏家とは言葉も通じず、彼は楽譜を用いない即興演奏だったので、一緒に音楽をつくっていくのは大変でしたが、歌声やアイコンタクト、ボディーランゲージで伝え合いました。外国人の演奏家は心の動きをストレートに表現し、いいと思った演奏には惜しみなく「ブラボー」や「ワンダフル」を発してくれ、手を握ったり、抱きしめて気持ちを表現してくれたりするので、心の触れ合いをストレートに感じることができました。

4作目CD『マンドリンの煌きとギターの輝き』

4作目CD
『マンドリンの煌きと
ギターの輝き』


 もう1つ大切に取り組んでいることはユニセフへの支援活動です。2004年に日本ユニセフ協会後援のチャリティコンサートを開催して以来、ずっとコンサートの度に募金と啓発活動を行ってきました。苦しんでいる子どもたちのために少しでも何かできないかと思って始めた活動ですが、多くの人に共感していただき、支えられて行ってきました。今後も息長く続けていきたいと思っています。

 演奏活動に加えて、後進の指導にも力を入れています。多くの生徒が中高年になってからマンドリンを始め、日夜練習に励んでいます。年を取って何か打ち込めるものがあるということは、大変幸せで恵まれていることです。好きなことに没頭できることの幸せを感じ、それを自分だけの楽しみとするのではなく、1人でも多くの人に喜びと幸せの輪を広げるようにと生徒たちに伝えています。

 私は、自分が魅せられたこのマンドリンの音色を多くの人に伝えていきたいと思います。

 愛や感動などの生き生きとした心の動きは、豊かな人生につながります。マンドリン音楽を通じて、そんな心の喜びや安らぎ、そして生きる力を人々の心に生み出せたらと願っています。



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