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(株)ロクレールプロダクション代表取締役・グラスアーティスト/三浦 啓子さん

(株)ロクレールプロダクション代表取締役・グラスアーティスト/三浦 啓子
「ロクレール 光を表現するために」
Profile

三浦 啓子/グラスアーティスト
(株)ロクレールプロダクション代表取締役。ステンドグラス作家協会会長。 ハーヴァードアートスクールにてステンドグラスを学ぶ。その後、ダルグラスとエポキシ樹脂による独自の光の表現方法「ロクレール」を確立する。 主な作品は公共施設、病院、ホテル、企業、学校、寺院など国内外に展示。
http://www.roclair.co.jp/



壁一面を彩るステンドグラス(中山寺/宝塚市)

壁一面を彩るステンドグラス(中山寺/宝塚市)

 ロクレールとは、「輝く光の岩」を意味し、分厚いガラスをハンマーでカットして、エポキシ樹脂でつないで作る立体的な厚みを持ったステンドグラスです。私は「光」を作品にしようと思い、このロクレールという手法にたどり着きました。

 結婚した頃、教会で祈りをしている時に、私はふと差し込む光の中に今までにない美しさを感じました。力強く、かつシャープで、ダイナミックでありながらも優しい光。この光をどうにかして自分の手で表現したいと思いました。

 学生時代より油絵などを描いていた私はまず絵画で光を表現することを思いたちました。しかし、絵画のどの手法でも、どんな大きなキャンバスにも、私の描きたい光の全てを表現することはできませんでした。力尽きた私は、その後、子育てに奮闘したり、染色に熱中したりと、絵画から離れた生活を送っていました。

 33歳の時に主人の仕事の関係で、渡米。その折、知人と行った国連ビルで、シャガールのステンドグラスと衝撃的な出合いをしました。そこには、私が表現したいと思っていた光がありました。私が求めていた表現方法はこれだと確信しました。

ドイツのガラス工場にて(1988年)

ドイツのガラス工場にて(1988年)

 ステンドグラスを学ぶため、私はハーヴァードアートスクールに通い始めました。ステンドグラスの修理工たちが多くいるクラスで、絵画の基本を勉強していた私はぐんぐん力を付けることができました。またアメリカでの教育方法は日本とは全く異なり、個性的で自由な発想が大事にされ、先生に「これはどちらがいいですか?」と尋ねたりすると、「あなたの作品でしょう!自分で決めなさい」と突き放されることも。ここでは、ほかにもステンドグラスが文化として継承されていることや、メンテナンスの重要性なども学びました。

 帰国後も、ステンドグラスを制作し、発表を続けました。しかし、まだ日本ではステンドグラスに対する関心がない時代。しかも、ステンドグラスを学んでも、学んでも、私が表現したい光にはなかなか近付けなかったのです。

 今までにない、ステンドグラスを作る必要がある!

アトリエにて制作(2000年)

アトリエにて制作(2000年)

 そう感じた私は、まず理想のガラス作りの研究から始めました。知人の紹介で訪ねたフランスのガラス会社で、釜場にこびりついた、光のように輝くガラスの塊の美しさに釘付けになりました。強く大らかで豊かな光を表現するためには、このような独特の質感を持つ分厚いガラスが必要だと感じました。しかし、このようなガラスは当時の日本では作れないと思い、ドイツのガラス職人の協力のもと、原料を溶かしガラスを作る所から取り組みました。

  次にガラスを継ぎ合わせる方法が必要となりました。ガラスをつなぐ部分は影の役割も果たし、非常に重要です。つなぎは鉛を用いるのが一般的でしたが、私が思い描くように分厚いガラスをつなぐためには、エポキシ樹脂がいいのではないかと考えました。エポキシ樹脂によってガラスをより強力に接着することで、大胆にガラスをつなげ、大きな作品ができると考えたからです。

  しかし、当時は樹脂の研究が今ほど進んでおらず、毎日、試行錯誤の連続。樹脂を混ぜ合わせる硅砂も重要で、何号の砂が適しているかなど実験を重ねました。また当時の樹脂はあめ色でしたが、黒色の方が作品に映えるため、黒炭と砂を混ぜ合わせて、影を演出できるように改良しました。アトリエから帰ると、顔も下着も真っ黒になるほどの没頭ぶりでした。しかし、その甲斐あり、大空間を飾るにふさわしい、大胆に光と影を表現したステンドグラスを作り上げました。ロクレールの完成です。

天井のステンドグラスから差し込む優しい光(中山寺/宝塚市)

天井のステンドグラスから
差し込む優しい光(中山寺/宝塚市)

 しかし、日進月歩する樹脂の技術に対応していくなど課題は山積みで、これからもデータを取り、研究を進めていきます。また、ハーヴァードアートスクールで学んだように、ステンドグラスはメンテナンスも重要で、私は、制作年月日や現在の状況、手当ての薬品などのリストやカルテを作り、往診にうかがっています。

 私は、優しくて力強く、そして希望や勇気を与えてくれる光に魅せられ、この光を表現しようと作品制作に取り組んできました。そのことに喜びを感じながら、仲間たちと制作に打ち込む毎日を送っています。ロクレールの生み出す光が、見る人の心に、少しでも多くの感動を与えるよう願っています。





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