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ティーライフ・デザイナー/奥川 伊津子さん

ティーライフ・デザイナー/奥川 伊津子
「英国ティールームの旅」
Profile

奥川 伊津子/ティーライフ・デザイナー
日本紅茶協会ティーインストラクター・日本ティーインストラクター会会員・NHK文化センター講師。ティーインストラクターの草分けとして、横浜ランドマークや八王子のNHK文化センター、自由が丘、鎌倉、浜松にも紅茶教室を持つ。自宅では“おもてなし”をコンセプトに、ティーと料理のコンビネーションを提案。セッティングを含め、ハイティーやアフターヌーンティーの指導を行う。
HP: http://www.cozytea.net



  父の転勤に伴い、東京に引っ越してきたのは、昭和42年。まだ学生だった私は、料理好きの母と一緒に飯田深雪先生のアトリエに通い始めました。私はアートフラワーを、母は西洋料理を習いました。私の誕生日に母がプレゼントしてくれた『西洋料理』初級1(飯田深雪・圭子著、昭和45年講談社刊)、そのページを開いたとき、お茶のテーブルのなんと美しかったこと!同じデザイン・パターンのティーポット、シュガーポット&クリーマー、そしてカップ&ソーサーとプレート、光り輝く銀のカトラリー…。当時、紅茶は茶こしで淹れるのが主流でしたが、「紅茶を淹れるにはティーポットで」という深雪先生の言葉を母から聞いて、ティーポットで紅茶を淹れてはみるものの、満足できる味ではありませんでした。

英国イージングウォルドの町

英国イージングウォルドの町

薬局を兼ねた雑貨屋さん

薬局を兼ねた雑貨屋さん



 主人の転勤で約3年半、タイに駐在。平成元年に帰国しましたが、バンコクでの暮らしの中で紅茶を淹れても、なぜまずいのか、いつも疑問に思う日々でした。そんな折、平成6年に日本紅茶協会のことを偶然知り、紅茶関連の企業人に交じって、「ティーインストラクター」の資格を取得しました。おいしい紅茶の淹れ方はもちろん、紅茶について学びました。紅茶に親しめば親しむほど、紅茶の背景にある英国文化や歴史にも興味を抱くようになりました。と同時に、紅茶文化を発信している英国のティールームを訪ねてみたいと思うようになったのです。

 平成8年に日本紅茶協会の研修で初めて英国を旅行。ブリティッシュ・ティー・カウンシルではテイスティングを、サヴォイホテルなどではアフターヌーンティーを堪能し、紅茶のロンドン・オークションも見学しました。その後、平成11年からは主人と二人で英国南西部、南東部、北部、コッツウォルズ、スコットランドなどを主人が運転するレンタカーで回り、各地のマナーハウスやホテル、B&Bなどに宿泊しながら、現地のさまざまなティールームを訪問しています。

「ティーヒー」のお店

「ティーヒー」のお店

「ティーヒー」で注文したラプサンスーチョンとダージリンティー

「ティーヒー」で注文した
ラプサンスーチョンとダージリンティー

「ティーヒー」の女性スタッフと

「ティーヒー」の女性スタッフと

 その年はグラスゴーの著名な「ウィローティールーム」を楽しみ、ダラム、ハロゲイトと辿り、ヨークに立ち寄った時のこと。ヨークから車で30分ほどの所にあるイージングウォルドという町で、ブリティッシュ・ティー・カウンシルから“ベストティープレイス”の称号を何度も獲得したティールームを訪れようと朝早くホテルを出発しました。開店30分以上も前に到着したので、町の中をうろうろしていると、目立つのは年配の人ばかり。薬局を兼ねたかわいらしい雑貨屋さんで小さなお土産を買い、「そこの有名なティールームに憧れてきました」と話し掛けると、オーナーの品の良いおばあさんは「ここでお茶を飲むなら、『ティーヒー』よ」と言うではありませんか。

 早速ティーヒーに行ってみると、お店の中は町の人たちで溢れ返っていましたが、なんとか席を確保しました。後ろに聖書を入れるためのポケットが付いたチャーチチェアに座り、古い小さなテーブルの上のメニューを見て、ラプサンスーチョンとダージリンティーを注文。もう一軒訪問予定の有名なティールームを意識して、お茶だけにしました。リーフティーの蒸し具合も良く、おいしい紅茶に心も温まり、天井を見上げれば、そこにはティーポットとカトラリーのオブジェが…。オーガニックやグルテンフリーなど、環境や体に優しいものにこだわっており、ケーキやパンなどの種類も豊富で、若い女性のスタッフがきびきびと働き、お店全体に活気がありました。

 有名なティールームの開店時間となり、そちらに移動すると、ティーヒーとは打って変わってお客は私たちだけ。イージングウォルドが栄えていた100年前の写真が飾ってあり、店の雰囲気は悪くないのですが、生気が感じられません。メニューを見て納得。あったのは、ヨークシャーティーのティーバッグで淹れる紅茶と、2、3種類のケーキだけ。なんということでしょう。栄華を誇ったそのお店は以前の持ち主の手を離れ、店名は同じでも全く別のティールームになっていたのでした。

 紅茶に対する強い想いがあるかないかで、こんなにもティールームが様変わりしてしまうのを目の当たりにし愕然とするとともに、“社交場”としてのティールームの在り方を改めて考えさせられました。自分の中に紅茶への熱い想いがふつふつと湧き上がるのを感じ、これからも英国ティールームの旅を続けていこうと決心した旅でした。



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