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消しゴム収集家/岡村 吏瑳子さん

消しゴム収集家/岡村 吏瑳子
「消しゴムに魅せられて」
Profile

岡村 吏瑳子/消しゴム収集家
お問い合わせ先
メール:erasercollection@yk.ciao.jp



たい焼き消しゴム

たい焼き消しゴム

消しゴムコレクション

 世の中には、特定分野の物を収集しているコレクターと呼ばれる方々が多数いらっしゃいますが、私の場合は収集の対象が「消しゴム」。小学生のころから少しずつ集め出しました。当時は自分の少ないお小遣いで買える身近なおもちゃ感覚でしたね。両親もそんな私に小言を言うことなく笑いながら見守ってくれていたこと、今になってとても感謝しています。

 高校生のときに「たい焼きの形の消しゴム」に出合ってからというもの、食べ物の形をした消しゴムを見ると買わずにはいられなくなり、そこから私のコレクター人生が始まったのかもしれません。

 この「たい焼き消しゴム」、パカッと割ると中にはあんこがはさまっている芸の細かさ。こういう細かなことにも手を抜かないメーカーさんの粋な職人魂に、心を奪われたと言っても過言ではありません。心躍らせるような魅力的な消しゴムを国内生産されて、昔と変わらぬ値段で世に送り出してくれるメーカーさんには敬意と感謝の気持ちでいっぱいです。単にかわいいだけでなく、実際使ってみても本当によく消えるという点も面白消しゴムの魅力のひとつです。

 世のあらゆるものが消しゴム化されているのではないかと思うほど本当にたくさんの種類がありますが、中でもお気に入りは前述のたい焼き消しゴム(ゼンシンショウジ社)とシード社のジャンボRadar消しゴム。後者はジャンボというだけあって、重さはなんと2kgもあるとてもユニークな消しゴムです。

 最近はガチャガチャで売られている消しゴムや企業の販促品としての消しゴムがかなり出回っているようですが、そういう消しゴムをすべて自力で見つけるのはやはり困難です。探している消しゴムが見つけられないときにいつも助けてくれるコレクター友達のお陰もあって、私のコレクションはさらに増えていっています。夫の会社の同僚の方も出張や旅行の際は消しゴムをお土産にくださったりして、感謝の気持ちでいっぱいです。

海外の消しゴム

ジャンボ消しゴム

ジャンボ消しゴム

 インターネットのお陰でさまざまな国の方に出会い、海外の消しゴムコレクターさんとの交流の結果、私の元へ送られてくる消しゴムたちは世界各地のいろんな風と香りを運んできてくれます。そしてそれらの消しゴムは、相手の国の言葉や歴史、文化にも興味を持つきっかけを私に与えてくれます。

 例えばチェコの方には簡単なチェコ語のあいさつや単語をメールで教えてもらったり、オランダのコレクターさんは観光用のパンフレットを消しゴムと一緒に送ってきてくれたり、香港の方は毎年旧正月には必ずポストカードを送ってくれたりとさまざまですが、私にとって消しゴムとは自分の視野をより広げるための手助けをしてくれる存在です。

 先日、折り紙好きの娘が和紙で作った折り鶴を「娘が折った鶴です」という説明も添えて消しゴムに同封し、英国のコレクター友達に送ったときには「Thank you for beautiful paper swan.」という返事をいただき、娘もスワン~?!と面白がっていました。消しゴムから始まった交流が文化や価値観の多様性を教えてくれたひとときでした。小学生の娘にも、同じ趣味を持つ世界のいろんな方と知り合う楽しさに興味を持ってくれたらいいなと思い、メールや手紙はいつも一緒に読んでいます。

自作消しゴム「ミニタルト」

自作消しゴム「ミニタルト」

自作消しゴム「いちごのタルト」

自作消しゴム「いちごのタルト」

自作消しゴム「玄米ご飯と、ひじき煮、カボチャコロッケとキャベツのせん切り」

自作消しゴム「玄米ご飯と、ひじき煮、
カボチャコロッケとキャベツのせん切り」



自作消しゴム

 きっかけは粘土消しゴムとの出合いでした。粘土状の消しゴムをよく練り、好きな形に成形しホットプレートで焼くと固まって消しゴムになるというものです。買ってはみたものの、育児で忙しかった当時はそのまま放っておいて実家に帰ったときにゆっくり作っていました。

 当時作っていたのは、2~3cm大のミニチュア消しゴム。市販されていなかった和菓子の消しゴムが欲しくて、黒糖饅頭や若鮎、うさぎ饅頭などを作りました。今までの作品は、フルーツみつ豆、人体模型、あられにケーキ、タルトなど。暇を見つけながら気ままに作っているので、あまり数は多くありませんが1度実物大のアイスクリーム消しゴムを作ってからというもの、ミニチュアサイズでは物足りなくなり、最近では「食品サンプル」のように実物大の精巧でリアルな消しゴム作りを目指しています。

 最新作は「玄米ご飯と、ひじき煮、カボチャコロッケとキャベツのせん切り」消しゴム。わが家では基本的に玄米菜食を心掛けているのですが、今までの作品はお菓子系が多かったので、せっかく作るのなら消しゴムを通して玄米菜食を紹介できたらという思いで作りました。

 消しゴムを作るときには、接合に接着剤などは使いません。彩色もしません。1番気を遣うのは質感です。どうやって本物らしく見せるかが重要なテーマです。例えば油揚げを作るときはタオルの上で消しゴムを伸ばして表面の凹凸を表現してみたり、大豆を作るときでも指紋などが付かないように気を遣ったりというふうです。夜中にじーっと本物を見つめながら作るときもあります。そんなときは隣にいる夫も消しゴム作りに巻き込まれたりします。普段私より体温の高い彼の役目は粘土消しゴムを練って柔らかくすること。実物大の消しゴムを作るようになってからは、たくさんの量の粘土消しゴムを使うので、練るという作業は力と体温が必要なのです。

消しゴムへの思い

 両親が旅行に行ったときに買ってきてくれた消しゴム、下の子がまだ首も据わっていないころ、家族で消しゴム探しに行って見つけたもの、学生のときふと立ち寄った文具屋で一緒にいた友達がプレゼントとして買ってくれたペットフード形の消しゴムなどなど、それぞれの消しゴムにはひとつひとつの思い出が詰まっています。消しゴムを手にするたびに古き良き自分の少女時代にタイムスリップしたような気分になります。

 3代続くという古い文房具屋さんで、店主のおばあちゃんと仲良くなり、娘時代の話やよもやま話で盛り上がるおばあちゃんの話を聞きながら買ったレトロな消しゴムを手にするたびに、あのおばあちゃんはお元気かなぁと懐かしく思い出します。このときは30円の極東ノート(値段もレトロです)もおまけで頂きました。

 消しゴムは身近な日用品のひとつ。使われて小さくなり、いつしか消えていく存在なのだけれど、私にとっては作った人の真剣な思いや遊び心が詰まった夢の塊。

 わが家において消しゴムはそのはかない運命を免れ、大切に大切に保管されています。

 しかし時折思うのです。毎日家族全員でせっせと使ったとしても曾孫の代まで残るであろうこの消しゴムたち、わが身を削って字を消すという本来の役目を果たした方が幸せなのか、それともその存在を世に知らしめて生きながらえるのが幸せなのだろうかと…。



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