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ウーマンズフォーラム魚(WFF)代表/白石 ユリ子さん

ウーマンズフォーラム魚(WFF)代表/白石 ユリ子
「こども記者とともに、大いなる海のいのちに感謝しよう!」
Profile

白石 ユリ子/ウーマンズフォーラム魚(WFF)代表
ウーマンズフォーラム魚(WFF)
〒104-0061
東京都中央区銀座3-12 -15
TEL 03-3546-1291 FAX 03-3546-1164 Email:gyo@WFF.gr.jp
ホームページ:http://www.WFF.gr.jp/



浜のかあさんと語ろう会(魚にさわる)

浜のかあさんと語ろう会(魚にさわる)

愛する日本、大切な海と魚を手放していいのか

 私たち日本人は、海の幸に恵まれること、海の幸に人生を重ねることを当たり前のこととして生きてきました。私自身のことをお話ししますと、クジラに特別の思いがあるのは、小さいころ、父に連れられてクジラの解体場を見に行った経験が心に刻まれているからです。「クジラは神様が私たちにくれた世界で1番大きな海の食べ物なんだよ。だから感謝して食べなくちゃね」という父の教えでした。

 お魚にも、特別な思いがあります。お節句のお料理や、結婚の結納品など、人生の節目には必ず海産物が添えられてきました。その上縦に長く伸びた日本列島では、北に行けば北の魚、南に行けば南の魚。獲れる魚が違えば食する文化も違います。私にとって魚は日本文化そのものなのです。

 それが今、失われようとしています。日本人の魂ともいうべき風土、漁業、そして食文化がいつの間にか危機的な状況にまで来ているのです。気付いた人が声を出し、海から食卓までに関わるすべての人が知恵を出して話し合う場をつくらなければ、大切な大切な日本の食文化は失われてしまいます。

こどもとサカナ体験ツアー(ホームステイ)

こどもとサカナ体験ツアー(ホームステイ)

こどもとサカナ体験ツアー(漁業見学・養殖)

こどもとサカナ体験ツアー(漁業見学・養殖)

原点は魚食文化が失われるという危機感から

 私は子どもたちへ『海彦クラブ』という魚食文化を伝える活動を行っておりますが、この活動を始めたのは、日本人全体が無意識のまま魚食文化から離れてしまっているという私の危機感からでした。その危機感からウーマンズフォーラム魚が生まれ、その延長線上に子どもを対象とした『海彦クラブ』の活動がスタートしました。だからこそ、『海彦クラブ』は1年にわたる体験的プログラム、毎回毎年新しい小学校と新しい漁村を結ぶというプログラムになっています。1人でも多くの人に、1つでも多くの漁村に海と魚の大切さを気付き動き出してほしいとの願いから企画はスタートしました。参加する子どもは大変ですが、大人たちがそれだけの思いを持って時間と労力をかけなければ、子どもたちに魚食文化を伝えることなどできません。私は文字通り、この活動に人生を賭けて取り組んでおります。もちろん、協力してくださる大勢の方やウーマンズフォーラム魚の仲間たちがいてくださってのことですが、毎回毎回チャレンジです。

『海彦クラブ』は1年間かけて子供たちの主体性を育む

 『海彦クラブ』は、年間を通じて4つの体験活動を行い、子どもたちが海とサカナについて主体的に考えるプログラムです。そして1年をかけて小学生たちの緩やかなネットワークをつくっていくものです。

 春には、都内3つの小学校で『浜のかあさんと語ろう会』という授業を実施します。講師は漁村のかあさんです。日本には全国に3500も浜があるそうです。毎回交渉し、1つの浜から東京の小学校へ来てもらいます。教室は、かあさんが浜から持ってきてくれた魚と子どもたち、保護者の母親たちで大騒ぎ。子どもたちは初めて魚の姿を見、自ら包丁を握ってさばき、新鮮な魚のおいしさを実感します。魚嫌いの子どもも「恐る恐る口に入れたら、おいしくて食べられた!」という体験に自分でビックリします。そして子どもたちは一様に「浜へ行きたい!」という気持ちに駆られ、作文にとりかかります。

 夏には、参加児童の中から作文で選抜された子ども代表30人を“こども記者"として漁村へ連れて行きます。『こどもとサカナ体験ツアー』と名付けたこの旅で、こども記者たちは初めて漁船から海を見つめ、漁師さんの仕事の大切さを学ぶのです。漁師さんの家に泊めてもらい、早朝の船出を見送ったり同行させてもらったり。朝早く起きて海で働く漁師さんの仕事、それを支える家族の暮らしをまるごと体験し、おいしい魚をたっぷりと食べ、真っ黒に日焼けして東京に帰ってきます。

こども・海とサカナのフォーラム(こども記者の発表)

こども・海とサカナのフォーラム
(こども記者の発表)

 そして秋も深まったころ、“こども記者"たちが大勢のお友だちや先生方、お父さんお母さん、『浜のかあさんと語ろう会』に参加した同級生に“漁村で体験したこと"を報告する『こども・海とサカナのフォーラム』を開きます。こども記者たちはそれぞれ『ウーマンズフォーラム魚新聞社』として、自ら撮ってきた写真や取材した数字、漁師さんの話をもとに、浜の様子を立派に報告します。そして、海を大切にするとはどういうことか、今日から自分が取り組むべきことは何かを考え、具体的な行動宣言をウロコカードに記し発表します。これは、子どもが自分自身と社会に約束するセレモニーなのです。

 さらに冬。子どもたちが自らの体験や感動したことをまとめ、絵に描いて表現し、『海彦クラブレター』にまとめます。そして全国の小学校やお世話になった浜の皆さん、マスコミなどに送り、浜と都会を結ぶ大切さを広く伝えるのです。

 この一連の活動の意義は、子どもたちが大きなインパクトを持って「海・サカナ・漁村」について知ることにあります。小学校で行う『浜のかあさんと語ろう会』では、「産業」の視点、「食」の視点、「環境」の視点を大切に、子どもたち自身が考え体験することを重視して行います。また、1つの学校の枠にとらわれず、複数の学校が一緒に活動する場をつくり、訪問先の漁村でも地元の小学生と交流の機会を持つなど、自分以外の子どもの考えを知り、理解を深めるプログラム作りに努めています。

 さらに、この活動の社会的な意義は、子どもたち自身が漁村や漁業者の役割を理解し、自分たちの言葉で広く世の中に伝えることなのです。参加した子ども自身にとって一連の体験は深い意義がありますが、それにも増して重要なことは、小学生が“小さなジャーナリスト"として、社会に「漁業・漁村」の存在意義や「海の環境保全の大切さ」、「食料としてのサカナの重要性」を伝えることにあると私は考えています。

こども・海とサカナのフォーラム(こども記者が海の絵を発表)

こども・海とサカナのフォーラム
(こども記者が海の絵を発表)

大いなる海の命をいただいていることに感謝したい

 参加された子どもたちや保護者からは、「海の恵みのありがたさを実感した」「魚が好きになった」「漁師さんに感謝したい」という反響をいただきます。「海のいのちが魚を通して私につながっているんですね」と感想を寄せてくれる子どももいます。

 1年間のプログラムを終えた子どもたちの宣言をみると、「ご飯を食べ残したり、海を汚したりしない、ゴミをなるべく捨てないように努力する!」「水の節約をします!」「お風呂に使った水を洗濯に使う。水の再利用!」などなど、今日からできる具体的な取り組みが並びます。また『こんな海にしたい!』というテーマで絵とメッセージを書いてもらうと「海をきれいにしたい。そしてイセエビが大きくなったのを勇神丸の漁師さんにとってもらいたい」など、環境問題と漁業、食文化の大切さを理解したメッセージが自然に出てくるようになっています。

 1年間教室で、また漁村で学び、人前で発表することを通して、子どもたちは驚くほど海と魚の応援団になってくれています。この活動を始めて6年目、まだまだ小さな活動ですが、参加児童はこども記者210人、フォーラム参加児童はのべ2000人になりました。

 私が子どもたちに伝えたいことは、「資源のない国・日本にとって、海と魚は大切な財産です。私たちは毎日、大いなる海のいのちをいただいて生きているのです。海の幸に感謝しましょう。海をきれいにしましょう」ということ。そのためにどうしたらよいかを、これからも子どもたちと一緒に考え続けてゆきたいと思っています。「大いなる海の豊かな恵み」は放っておいては守れないのですから。



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