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ハワイアンキルト制作者/錦織 智子さん

ハワイアンキルト制作者/錦織 智子
「ハワイアンキルトの魅力」
Profile

錦織 智子/ハワイアンキルト制作者
横浜生まれ。子どものころから手作りが大好きで、絵を描いたり、手芸や編み物などに興味があった。学生時代にジュエリーに興味を持ち、その後某ジュエリーブランドにて新規商品開発の仕事に就く。2000年に共通の趣味を持つ友人からハワイアンキルトを紹介され、その明るく大らかな雰囲気に魅せられ、作品を作るようになる。ハワイアンキルトやインテリアなど、自作の作品や趣味を紹介している。



ハワイアンキルトとは

 南国を想わせる明るく大胆な配色と、ハワイの植物などをモチーフにしたアップリケキルト。大らかでダイナミック、そしてシンメトリーのデザインを持った、ハワイに伝わる独特のキルトです。アップリケされたデザインの輪郭に沿って、打ち寄せる波のように全体をキルティングしていく「エコーキルティング」は、ハワイアンキルトの大きな特色です。

 ハワイアンキルトはそれを目にするだけで、色とりどりの花や青い海などのハワイの優雅な自然を感じ、島々への愛情や情緒を感じることができます。ハワイアンキルトはほかのキルトと違ってもともと生活の必需性から生まれたものではないので、それは非常に価値の高いアート、装飾品、歴史を残す存在として大切にされています。

ハワイアンキルトのデザイン

 ハワイアンキルトのデザインは、主にハワイの植物や自然がモチーフになっています。その代表的なモチーフにはそれぞれの伝説や意味があり、人々はそんなモチーフに願いや祈りを込めてキルトを作ってきました。モチーフの中で人気が高いのは「パンの木」や「レフアの花」。パンの木とは現地に生息する木で、成長すると10メートルを超える大木になります。この実は昔からハワイの人々の重要な食料源となり、その幹はカヌーに、樹液は接着剤として使うことができたため、人々にとってなくてはならない木でした。こうしたことからパンの木をモチーフにしたキルトを作ることは、“豊かになる”“繁栄”という意味を持ちます。

キルト技法の伝来

 キルトの歴史は浅く、その技法は1820年代にハワイを訪れた、アメリカの宣教師一行の妻たちによって伝えられたことが始まりです。その当時のアメリカでは開拓者の妻たちが、古くなった衣服やあまり布を寄せ集め、丹念に縫い合わせて作った「パッチワークキルト」が主流でした。ハワイに最初に伝えられたのはこの技法でしたが、当時のハワイの人々が着ていた服(ムームーの原形)は1枚の布を最大限利用して裁断していたので、パッチワークキルトを作るだけの十分なあまり布がありませんでした。そこで当時のハワイの人々は1度大きな布を細かく切り刻んで、またそれらを後で縫い合わせるといった、奇妙な作業をしていたと言われています。

「パンの木のベッドカバー」

「パンの木のベッドカバー」

「クロトンリーフ」のタペストリー

「クロトンリーフ」のタペストリー

「エンゼルトランペット」ののれん

「エンゼルトランペット」ののれん

「ハイビスカスとエンゼルトランペット」の<br />クッション

「ハイビスカスとエンゼルトランペット
」のクッション

「ハイビスカス」のタペストリー

「ハイビスカス」のタペストリー

ハワイアンキルトの誕生

 パッチワークキルトからハワイアンキルトへ移り変わりがどのようになったかは明らかではありませんが、一説では宣教師から教えられたものの中に“紙切り芸”があり、これがヒントになったというお話があります。1枚の紙を何等分かに折りたたんで相対称のデザインを切り抜く方法は、ハワイアンキルトの技法に通じるものがあります。

 またキルターたちの間でもっとも好まれて語り継がれているのは、“木陰に干してあった白いシーツの上に、影を落としたレフア(花)の模様がハワイアンキルトのヒントになった”というお話です。いずれにしてもパッチワークキルトのように複雑で細かい作業を伴うキルトから、南国を連想させる大らかで明るく、自然と深く関わりながら暮らしてきたハワイの人々の情緒を盛り込み、伸びやかさ感じる独自のキルトを生み出していきました。

キルトの作り方、利用方法

 ハワイアンキルトには難しい技法やルールはなく、なみ縫いとたてまつりさえできれば初心者でもすぐに始められます。まず2色の布を選び、デザインになる布を8分の1または4分の1に折りたたんでカットします。これを台布に広げてたてまつりでアップリケします。それができたら表布、キルト芯、裏布の順に重ね、アップリケの輪郭に沿ってなみ縫いでエコーキルティングし、最後に周囲をパイピングで始末して完成です。

 ハワイアンキルトはほぼすべて手縫いのため、完成するまでには実に何ヵ月もの時間がかかります。ですのでキルトを作ることは自分の心を込めることでもあり、この贈り物をするのは親族や親しい友人に限られます。

 キルトにはさまざまな利用方法があります。大きなものはベットカバーやソファーカバーに、小さなサイズのものはタペストリーやクッションになります。またバッグやポーチ、アレンジを加えてテーブルクロスや“のれん”を作ってみたり、ハワイアンキルトはさまざまな用途に活躍します。

キルトを作るようになったきっかけ、魅力

 私がハワイアンキルトを作るようになったのは、2000年に共通の趣味を持つ友人から、「とってもきれいなキルトがあるよ!」と、キャシー中島さんの本を紹介されたことが始まりでした。

 私はもともとハワイが大好き。まぶしい太陽と爽やかな風。青い海に色とりどりの花。ダイナミックで豊かな自然と、ゆったりとした時間が流れるハワイは「楽園」と呼ぶにふさわしい、本当に心いやされるところです。初めて見たハワイアンキルトは、まるでそんなハワイの風景を写し取ったようにも見え、一目で心奪われました。こんな素敵なキルトがあったなんて…。その感動は今でも覚えています。素敵!ぜひ欲しい!私の中でキルトへの思いが一気に高まりました。でもとっても高い…!そう、ハワイアンキルトは大変高価なんです。すばらしいキルトに魅せられてしまった私は、もともと手作りが好きだったことも手伝って、「自分で作ってしまおう!」と。それが始まりでした。

 そのころ同じようにハワイアンキルトに魅せられた仲間がいて、みんなで一緒にスタートしたこともよかったと思います。分からないところを聞き合ったりお互いの作品を見せ合うことで三日坊主になることもなく、逆に刺激になりました。時々ハワイアンキルト講習会を名目にみんなで集まって、おしゃべりに花を咲かせる楽しみもできました(笑)。

 手作りの良さはたくさんあります。ひとつはオーダーメードの品ができること。すべて自分好みに作られていますから、これは気に入らないはずがありません。

 そしてもうひとつは形になっていく楽しさ。頭の中で出来上がりをイメージしていても、作っていく過程でその表情は全然変わってくるんです。私の場合、布と色選びを1番大切にしています。配色は好きな色を組み合わせてもいいんですが、デザインが1番キレイに見える色が大切だと思います。色次第でデザインがぐっと引き立つ場合もあれば、逆にぼんやりしてしまうこともあります。また布は「むら染め」のものを使っていますが、これもいい染めの布を使うと作品に躍動感や立体感がでます。大切な贈り物には、こだわって海外から取り寄せた布で作ることもあるんですよ。

 それぞれの過程でさまざまな表情を見せるので、最終的に出来上がるまでどんな品物になるか分からない。そんなドキドキが完成するまでの楽しみでもあります。そうして出来上がったときの達成感や喜びは格別です。

 ハワイアンキルトは多彩な色の組み合わせがあるので、ひとつひとつが新鮮に感じますし、腕が上がるにつれて大きな作品や複雑なデザインにチャレンジしたくなるので、その魅力は尽きることがありません。また作品には、デザインや色選び、作り方などから作り手の個性や人柄が伝わってきたりして、手作りには “その人らしさ”が溢れています。ほかのキルターさんの作品を見るたびに新鮮な発見があり、感性を刺激され、キルトを通して人との関わりを楽しむことができることも大きな魅力です。

 そして毎日過ごす、1番リラックスしたい家だから、お気に入りのものや手作りの温かさに囲まれて、心地よい空間をつくる「暮らし」の楽しみがそこにあります。  これからも“私らしい”何かを作り続けていきたいと思っています。

○参考文献
「The Hawaiian Quilt ~楽園に咲いた布の花 ハワイアンキルト展」(有)国際アート
「Menehune Quilts .. the Hawaiian way」Elizabeth Root



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