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染織工房運営/福島 あずささん

染織工房運営/福島 あずさ
「染めと織りとスローな暮らし」
Profile

福島 あずさ/染織工房運営
1962年富山県生まれ。 1995年より染織工房studio-taoを設立以降、富山、金沢、大阪、千葉などで個展活動。 1999年よりオンラインショップ。 「手織り手染めの布工房studio-tao」運営 http://www.studio-tao.com/



草木染めショール(ローズマリー染め)

草木染めショール
(ローズマリー染め)

裂き織りベスト「砂の大地」

裂き織りベスト
「砂の大地」

 私は、富山で、染めと織りの工房と、オンラインショップをやっています。作品は、綿や麻、絹などの天然素材を、草木や藍といった植物で染めた“草木染め”のショールや古い着物地を裂いて緯糸に織り込んだ、“裂き織り”と呼ばれる布を使った、バッグやベストが中心です。

 私が現在、工房兼居宅として住んでいる家は、大正期に村役場として使われていた洋館を、今から20年ほど前に移築復元したものです。移築にあたっては、新建材やサッシはまったく使わず、外壁や内装の色以外は、完全にオリジナルに忠実に復元しました。

 そのため、冬は、窓辺の花瓶の水が凍るほど寒く、クーラーなどもないため、夏は自然の風だけで涼をとる昔ながらの生活を送っています。

 最初は、とまどうことも多かったのですが、そんな暮らしの中で、自然に、エコロジーや自然食といった、今で言う“スローライフ(自然に沿った生き方)” に興味を持つようになりました。ですから、染織を仕事とするにあたって、天然素材、天然染料の布作りにこだわったのも、ごく自然ななりゆきでした。

 “草木染め”に使う植物は、昔から漢方薬などに利用されてきたものが多く、染液をとるために煮出していると、いい香りが家中に充満し、ちょっとしたアロマテラピーのよう。染め上がった後も、ほのかに残る香りが気分をすっきりさせてくれます。染材は、野山で採ってきたり、庭に植えてあるハーブを使ったりします。

 また、徳島から取り寄せている“すくも藍”を使った“藍染め”は、染められるようになるまで、1週間以上瓶の中で発酵させなくてはなりません。

藍染めタペストリー「相生」

藍染めタペストリー
「相生」

 “藍”は生きている染料なので、寒くなったら暖めてやり、元気がなくなったら栄養(清酒)をやったりと、まるで子どもを育てるように手間がかかります。

 しかし、それだけに、鮮やかな深いブルーに染め上がった布を見る喜びは格別です。数ヵ月たつと、だんだん染まらなくなり、ついには役目を終えるのですが、染液の原料は、藍(すくも)、石灰、灰汁(灰の上澄み)、ふすま(小麦のから)、清酒と、天然の素材ばかりなので、畑にまくと、とてもいい自然肥料になります。灰汁を取る灰も、昔は一冬分の囲炉裏の灰を利用したそうで、まったく無駄のないリサイクルの知恵に感心させられます。

 リサイクルといえば、“裂き織り”も、すばらしい知恵の布です。かつて、綿花の栽培ができない日本海側の寒冷地では、木綿は貴重品でした。その貴重な布を最後まで使い切るための再生技術として、“裂き織り”が発達したのです。擦り切れ、汚れて、もはやそのままでは使えなくなった布も、裂いて、糸の状態にして、もう一度織りなおせば、再び新しい布として、よみがえらすことができるからです。風を通さず、丈夫な“裂き織り”は、漁師の作業着や、野良着に用いられました。

 そういった知恵は、モノがあふれる現代においては、もはや必要のないものかもしれません。また、伝統工芸のような、華麗な職人技とは無縁の世界でもあります。しかし、そうした形のない「心の伝統」というべきものを、なんとか、今の生活の中に生かして、もの作りができたらなあと思っています。

 雪が降る北陸では、冬の寒さはかなり厳しくなります。そのため、毎年、冬の時期には、避寒と素材の買い付けも兼ねて、アジアの国々に旅に出かけます。辺境の布を作っている村々を訪ねると、いまだに、どこの家にも織り機があり、半自給自足の生活を送っています。

 織り機や道具も、すべて身の回りにあるものから作り出し、草木から繊維をとって糸を作り、家族のための布を織る…。そんな布作りの原点に触れ、等身大の“スローライフ”を実践している人々に出会うと、「わたしもがんばろう!」と勇気付けられるのです。

田んぼに水が入ったときのベストショット

田んぼに水が入ったときの
ベストショット

藍瓶

藍瓶

裂き織り

裂き織り




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