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今月のWomanは音楽魔法士 沼田 里衣さん

沼田 里衣さん

Photo by Akihiro Hama [HattoGraphicoDesign]

ごちゃまぜ音楽は美しい?
Profile

沼田 里衣さん/音遊びの会・おとあそび工房代表

1978年生まれ。学術博士。趣味・特技は木登り。障害のある人を含むいろいろな年齢の人と音楽づくりをしながら、研究を続けている。2013年にイギリス三領域横断ツアーを実施、NHK Eテレで特集される。日本音楽療法学会認定音楽療法士。大阪市立大学特任准教授。音遊びの会のCD・DVD、絶賛発売中!
http://otoasobi.main.jp


 ごちゃまぜはとっても心地よい。サラダの中に色とりどりの野菜と、チーズやオリーブや香り高いドレッシングなんかが混ざっていたら、天国にいるような気分だ。外国でバスに揺られながら、いろんな国の人々がそれぞれの国の言葉を喋っているのを聞くのは、夢のような心地よさだ。

 けれども、ごちゃまぜには、センスと創造性が大切。サラダの中に石が混ざっていたらかなり不快になるだろうけど、緑や赤の野菜がよりおいしく見えるように、お皿の上に並べて飾ることもできる!

おとあそび工房公演「おーいまいにちパンぱんパン」(撮影:中島諒)
おとあそび工房公演「おーいまいにちパンぱんパン」(撮影:中島諒)
おとあそび工房公演「おーいまいにちパンぱんパン」(撮影:中島諒)
おとあそび工房公演「おーいまいにちパンぱんパン」(撮影:中島諒)
音遊びの会東京公演「音の危機一髪!」ビッグバンド(撮影:金子由郎)
音遊びの会東京公演「音の危機一髪!」ビッグバンド(撮影:金子由郎)

 こんな風に、日々ごちゃまぜなことを見つけて楽しんでいる私が、「ごちゃまぜな音楽は美しいのだろうか?」ということを真剣に考え始めたのは、大学院生のころでした。もともと音楽が好きだった私は、知的な障害のある人と音楽づくりをしながら、大きすぎる音、小さすぎる音、遅すぎる演奏、気まぐれな演奏を、どうしたらセンス良く、楽しい音楽にできるのか、試行錯誤しました。研究を始めて一番驚いた録音は、ポール・ノードフという作曲家が、泣き叫ぶ5歳の自閉症の男の子と、その場で音楽をつくっているのを聞いた時です。その子は、慣れない部屋の中で激しくぎゃーっと泣いていたのですが、ポールは即興的にピアノで伴奏しながら語るように歌いかけ、男の子の声を旋律にして、生き生きとした音楽をつくっていったのです。すると、その子はだんだんと状況を理解し、ポールと笑いながら声でやりとりを始め、やがて言葉で話すことができるようになっていきました。ポールのピアノは、とても複雑で豊かな響きがして、童謡やポップスのような伴奏とは全く違うものでした。「音楽療法」と呼ばれる領域のことですが、これは療法というより魔法ではないか、そうだ、音楽魔法だ!と私は思いました。

 こんな音楽魔法の研究が楽しくなってしまった私は、もっといろんな人をごちゃまぜにしてかっこいい音楽をつくろう!と思い、2005年に「音遊びの会」というグループを立ち上げました。自閉症やダウン症などのいろんな知的な障害を持つ人たちと、一流の即興ミュージシャンたちを呼んで、踊りながら指揮をする子どものビッグバンドや、楽器演奏の真似だけの動きに声をつけたヴォイス・エア・アンサンブル、掃除機や空き瓶を使った保護者のバンドなどたくさんの演目を創り出していきました。不思議なことに、音楽の価値観が違うほど互いに興味が湧くようで、全然出会ったことのない演奏者同士の方が、面白い演奏がたくさん生まれました。後にNHKの朝ドラの『あまちゃん オープニングテーマ』の作曲者としても有名になった大友良英さんを始め、多くのミュージシャンやダンサーとともに、日本や海外でも公演を続けています。

 2014年からは、「おとあそび工房」という新しい活動を始めました。ここでは、音楽だけではなく、踊り、演劇、朗読、美術、インタビューなどいろんな表現も含めて、さらにミラクルごちゃまぜパラダイスな舞台が、たくさん生まれています。最近では、絵を描いて音を楽しむ方法を探ったりしていますが、これからも格闘技とのコラボレーションやお店の野菜売り場に声楽隊を登場させちゃおう!など、ごちゃまぜで美しい音楽の世界を追求し続けていきたいと思っています。


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