Wendy-Net トップページ > Ms Wendy > Back Number > 175号 注目の人 レポーター/竹内 海南江さん

Ms Wendy

BackNumber

175号 注目の人 レポーター/竹内 海南江さん

「立ち止まらないことが生きていくコツ!
振り返ると『後悔』という波におそわれるから(笑)」
竹内 海南江/レポーター
Profile

竹内 海南江/レポーター
TBS「世界ふしぎ発見!」のメーンレポーターとして、約16年間に渡り活躍中。
すでに90ヵ国以上を訪れ、番組の出演回数は180回を超える。
公式HP「かなな共和国 」www.kanana.com/は、すべて本人によるキャラクターデザインで、写真、童話、詩、エッセイなどを発表。
開設以来約3年、常に週1回の更新を行っている。


とりあえず困ったときには私は笑うようにしています


 早いもので「世界ふしぎ発見!」のレポーターになって16年、訪れた国は約90ヵ国になりました。どうしてそんなに続いたの?と秘訣をよく聞かれますが、どうしてなんでしょうね(笑)。私個人でいうと、よく食べてよく眠ることはもちろんですが、もしかしたら固定観念がなく、何でもありのままに受け入れる性格も関係しているのかもしれません。

 私は秘境のような場所に行くことも多いのですが、基本的に訪問先の家族に受け入れられるのがとても早いんです。自分では特に私を好きになって…とアピールしているわけではないのですが、気がつくと家族の一員になっている(笑)。そこで出会う人や起こることをありのままに受けとめ、私もありのままでいる。

 もし日本では食べる習慣のないもの、たとえ見たことがないものが出てきても、全く抵抗なく、何でもご馳走になっています。もともと好き嫌いはありませんし、彼らはおもてなしの気持ちで出してくださっているので、それがたまたま自分たちの食文化の中にないものだからといって「これは食べられない物」と思うのは、失礼ですよね。もちろん口に合う、合わないはありますけど、意外とおいしいことが多いんですよ。みんないろいろ工夫して、おいしく食べているんだなぁと、生活の知恵を感じます。

 旅に出る前は、スタッフの方が数ヵ月かけてリサーチしてくれた資料を読み、自分でもさらに調べ、相手先の風習や文化、現地事情を頭に入れるなど、入念に準備をしています。秘境やジャングルなどさまざまな場所に行くということは、犯罪や奇病などそれなりのリスクがありますから。

 例えば夜に山賊が出る峠もあれば、人間の皮膚内に卵を産みつける毒虫もいる。それを「恐い」と考えてしまうと何にもできません。それよりも、どうしたらそうならないか?を考えできるだけ準備して危機管理をする。

 現地に入ってからも、ロケの前には現地の方たちに事情をきちんと伺います。虫の撃退法や山道の安全な通行時間など、郷に入っては郷に従えで、そこで生活されている方の注意が1番確かなんです。冒険するならきちんと準備して、最低限命の確保はしていかないと簡単に命を落としてしまいますからね。それに旅は家に帰って完結なので、最後まで緊張感を持続させるようにしています。私個人の準備といえば、現地の状況にあわせて、いろんな症状に効く薬をスタッフの分までどっさり持っていくことです。日本から同行するスタッフは私を入れてたいてい5人。これは必要最低限の人数で、猫の手も借りたいほどなので、1人でも倒れたら大変なことになります。

 また5人中女性が1人ということもありますが、私はお母さん役なんです。だからみんなの健康状態がとても気になる。現地でみんなのトイレの回数や食事の量などをさりげなく見て、具合が悪そうだと「これを飲んでみたら」と薬を渡すので「ナース海南江」と呼ばれています(笑)。本当は薬はお守りになっているんです。私自身この16年間、病気で番組を休んだことはありません。でも実は現地ではよく体は壊してるんです。とはいえ、あんまり悲観的にならないようにしています。お腹が痛くても、持ってきた薬をはじから並べて、どうやって治そうかなぁ?と考えるのは楽しいし、熱があっても朗らかなんです。

 これは別に無理して心配かけないようにしているわけではありません。痛いときに痛い顔をしても痛みがとまるわけではないので「ま、笑っとこう」と笑った顔でいるんです。笑う門には福来たるではないですが、病気のときに限らず、とりあえず困ったときには私は笑うようにしています。笑い顔をすることで、気持ちが前向きになっていくし、もし暗い顔をしていると周囲にまでその気分が伝染してしまいますからね。それにお母さん役として、いつもおおらかで笑っていることで、子どもたちが安心して活動できますからね(笑)。

心身が柔軟だと、カルチャーショックなども柔らかく受けとめられる

南アフリカ ナマクアランドにて

南アフリカ ナマクアランドにて

 海外に出ると様々なカルチャーショックというパンチに見舞われます。このときに、頭が柔らかければパンチを受けても吸収して痛みが少ない。でも、もし固定観念にとらわれて頭が固くなっているとパンチをもらったときに粉々に砕け散ってしまうでしょう。そしてショックを与えた国の文化や風習が悪いと思いこむ。

 これはもったいないことだと思うんですよね。頭が固い人は海外に出るとよく怒ってます。特に日本人は始終怒ってますね。ご飯がおいしくないとか、お湯が出ないとか。現地の事情で蛇口から茶色い水が出たって、しょうがないと思うのです。

「何で蛇口から茶色い水が出るんだ」と怒ってきつい口調で言えば、その国の方だって、気を悪くしてしまいます。そういうときは「あら、蛇口から茶色い水が出るのね、どうすればいい?」と単純に聞けば、相手の対応もやさしくなる。言い方1つで相手の対応が全く違うものになり、旅の快適さが変わってくるんじゃないでしょうか。

 それにせっかく海外に出ているのだから、日本食がまずいと文句を言うよりも、現地のお寿司屋さんで「海外のお寿司ってどんなものが出るのだろう?」とわくわくするほうがずっと楽しいと思いますよ。

 だから頭と体は柔らかいほうがいいと思ってますが、今のところ私の頭はぐにゃぐにゃ状態のようです(笑)。しかも気力、体力が年々あがっていますね。女性はよく29才とか39才とか、年齢の節目節目で年をとることを悩みますが、私はそのあたり、早く繰り上がっちゃいたいほうです。例えば29才が20代の年長と考えると「これで20代が終わっちゃう」と考えずに、早く30代の年少さんになりたくなる。

 そう考えると老いも恐くないですよ。それまでの10年でリセットする部分と、持ち越すものは次に持ち越し上手に次の代に移る。知恵は蓄積されるものだと思います。例えば10代の子と体力では戦えなくても、年を重ねると、蓄積された知恵が、体力をカバーしてくれるんじゃないかと思います。

 私は年をとることより、命が老けるほうが恐いんです。70代、80代で命が輝いている方はたくさんいます。でも今の日本には、10代でもすでに命が老けてしまっている人が大勢いる。肌のツヤがどうの、というよりも、私は命の輝きがあせるほうがずっと恐いと思います。

自分の選ばなかった道を美化して後悔することはしたくない

エジプトアブ・シール地区の発掘現場にて

エジプトアブ・シール地区の発掘現場にて

 自分の選ばなかった道を美化して後悔することはしたくない  私は元々プラス志向ですが、仕事先で、困ったことや嫌なことがないわけじゃありません。そのときは考え方を変えてその場で消化することにしています。

 例えばロケ地で、ある山を撮影するのに雨が降ってしまったとします。滞在期間がその日だけなのに、「晴れたら、きれいだったのに」と言っていてもしょうがない。その日しかないワンチャンスなので、天気を悔やむより「雨は雨できれいだね」と思って山を見れば、みんなの気持ちが前向きになり、その日の仕事の出来が全く違うと思います。気持ちの切り替え方1つで、後からでる答えは変わってくる。これって、実は特別なところに行ったからそうなのではなく、どこにいても同じはずなんです。なかなか日本で普通に生活していると気づかないことですけれど。砂漠などに行き、自然の驚異に触れると、「人間の命って小さいな」と、本来の意味で生きていくことの大変さがよくわかります。とにかく今呼吸して、ご飯食べられてよかったなぁと生きていることに感謝する。

 だから私は今、外国にいても、日本にいても、何を見ても楽しいし、日々生きているのが楽しくてたまらないんです。海外にいるときは忙しく、家に戻ってきたら思い切りのんびりしようと、スイッチを切り替える。好きなだけ寝たり、食べたり、本を読んだり。といってもホームページの更新は毎週かかさないですし、小説の原稿も書いていますので、家にいても結構やることは多いんです。でもどれもやりたくてやっていることですから、いつでも楽しいんですね。私はやりたいと思ったことは、あまり先のことを決めず何でもやってみることにしています。もちろん物事を進める上で、こうしてああしてと頭の中で想定はしますよ。でもそれはただの段取りで結論までは出さない。結論までしっかり出して物事を決める人もいますが、答えを決めても、その通りにならないですよね。私は良くも悪くも最終的に出た答えが答えです。あのときこうしていれば…という後悔はしたくないんです。

 だって自分が2人いて2パターンの人生を試すことはできませんからね。別れ道にきても、選べるのは1つ。その都度選んだ方をよしとしていかないと、選んでいない方に何があったかわからないじゃないですか?一般にみんな、自分の選んだ方にいいことがないと、選ばなかった道の方を美化して、現状を否定しがちですよね。それは私は嫌なんです。それこそ時間の無駄。ありもしないことを考えるより、自分の選んだ道で、いいことがあるまで歩き続けたほうがずっといい。自分の歩いている道の先に、何かいいことがあるだろうと楽しみにしながら、転んだり木にぶつかったりしながらも、立ち止まらないことが、私の生きていくコツかもしれません。どんなにきれいな水でも、よどむと濁りますから、絶対に立ち止まらず、前に前にと進んだ方がいいんです。止まると「後悔」という恐ろしい波が襲ってきます。特に年を重ねると、その波はどんどん大きくなっていてね(笑)。

 ぐわっと大きな波がすぐ後ろまで来ているとしても、振り返らなければこっちのものです。

日常を楽しく生きることは親譲り

アフリカ ニジェール川にて

アフリカ ニジェール川にて

 後悔しないようにといえば、私はおみやげを買うときもそうです。うちの番組では「トップ賞」の方に毎週さしあげるプレゼントをロケ隊が持って帰ります。だから旅のちょっとした空き時間にスタッフとお店に入り、そのとき「いい!」と思ったら、すごく高いもの以外はとにかく買っておきます。たいてい家に持って帰ると「なんでこんなの買ったんだろう?」ということになるのですが(笑)。そうしないとあとで「買っておけばよかった」と後悔する。それが嫌なんです。そういう物って、ほんの短い時間しかないときにちゃんと見てもいないのに、時間が経つとその残像だけが残って、すっごくいいものに思えてきちゃうんですね。その後悔よりも、自分で持って帰った実物を見ながら「失敗した」と思う方がずっといい。いい、悪いは別として、私の仕事はあと戻りはできないのでその場その場で完結させて後悔を残さないようにしてます。 そんなわけでいろんな国のいろんな雑貨が私の部屋と実家にはたくさんあります。以前、アフリカで太鼓を買ったのですが、東京のマンション事情で叩けるわけはないので、実家に持って帰ったんです。この太鼓を母が実にうまく使っていましてね。玄関の脇のスペースに太鼓がおいてあるんですが、それをご飯の時間になると母が叩いて、父に知らせる。

 父は居間や寝室などそのときに居心地のいいところを探して昼寝をしているので、どこにいるかわからないんですね。母はいちいち父を探さずに太鼓をトコトコたたいて「ご、は、ん、だ、よ」と起こしているわけ(笑)。すばらしいと思ってしまいました。

 これって太鼓の使い方の原点ですよね。母は何とか使えないか?と知恵をしぼったんでしょう。太鼓も浮かばれたというか、彼女の頭の柔らかさや発想力に感動しました(笑)。先日も商店街でお父さんが青、お母さんが赤の風船を貰ったのを部屋に浮かべててね。風船ってだんだん中のガスが抜けて萎んでくるでしょ。それを見て「お父さんの風船が元気がない」とか、2人で競争してるんです。こうして毎日とっても楽しそうに生活している2人を見ていると、私に固定観念がなかったり、毎日楽しいのは、こういう親のもとで育ったからかもしれないと、その原点を見るような気がしています。私が親から小さいころから言われてきたのは「人様に迷惑をかけない」「あいさつをする」「お礼はきちんとする」など人間としての基本だけ。勉強ができなくても、別に怒られた記憶はないです。でも海外に多く出て、いろんな国の方と接してきて思うのは、大事なことは実はそこだということ。「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉と人を思いやる気持ちがあれば、それでいい。そういった人間の基本的なルールと、笑って楽しく毎日を過ごすという、生きる上での大切な知恵を私は両親から教わっていたんですね。

 笑っていても怒っていても泣いても1日は1日。だったら笑って生きていったほうがいいですよね。

(竹内さんの事務所 東京都渋谷区元代々木にて取材)



BackNumber

(無断転載禁ず)