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168号 注目の人 女優/有森 也実さん

「今年の私のテーマは『自立+学習』かな」
有森 也実/女優
Profile

有森 也実/女優
1967年、神奈川県横浜市出身。
1984年テレビドラマでデビュー。
1986年、映画「キネマの天地」(山田洋次監督)で主役の一人に抜擢。その後数多くのテレビドラマ・映画・舞台で幅広く活躍する。
大河ドラマ「翔ぶが如く」「秀吉」、連続テレビ小説「あすか」、火曜サスペンス劇場「わが町」、「ホテル」、「東京ラブストーリー」など。
映画は「226」(五社英雄監督)など。
舞台では、4年ぶりの樋口一葉役でこまつ座公演「頭痛肩こり樋口一葉」に出演。東京・紀伊国屋サザンシアターなど各地で、5月より公演が始まる。


旅公演では荷物を転がして


 今年5月から公演が始まるこまつ座の舞台「頭痛肩こり樋口一葉」(井上ひさし原作)では、樋口一葉(夏子)役で出演します。この作品はこまつ座旗揚げのときから上演されている名作ですが、私が夏子役を演じるのは4年ぶり。最初にこの舞台のお話をいただいたときは夏子ではなくて、彼女の妹のほうがやりたかったんですよ。性格にたくましさがあるし、私らしいと思って。そこで妹役ならやりたいと申し出たんですけど、やっぱり夏子を演じてほしいと押し切られまして(笑)。

 こまつ座の芝居の醍醐味はアンサンブルの妙。みんなが主役という面もあり、夏子の役は一応主役だけど“受け芝居”が多く、役者としての技量が必要なんです。けっこう難しい役だったので、最初のころは戸惑いもありましたね。でも演じているうちに、役柄に日常生活の感覚を肌で感じられるようになってきて。「ああ、自分も母親からこう生かされてきたんだな」とか。そうして演じているうちに、楽しくなってきました。

 また主役という自覚を持ちながらも、自分だけががんばらないといけないわけではなく、みんなと演じていくんだという気持ちになったとき、心がラクになりましたね

 この舞台は男の人は出てこなくて、すべて女優さんだけ。演出の木村光一先生のたくましい女性観が色濃く出ています。女性の激しさ、たくましさ、薄情さ。女性から見ると「ちょっといじわるかな」と思うくらいの描き方で。でもお客さんの方は、そういうホンネの部分が見ていて面白いんでしょうね。

 次から次へと各地を渡り歩く旅暮しも、舞台の独特なところ。マネージャーさんなしに、みんな一緒にそれぞれの荷物を転がしながら移動する。覚悟がいる仕事ですけど、慣れてしまうとなかなか楽しいんですよ。

 今回夏子を演じるテーマは『たくましさ』。女一人必死で生きてきたという彼女の強さを、さらに押し出して演じていきたいですね。

「女優はやめたほうが」


モデルの仕事
「MCシスター」

 子どものころは、順応性のあるナイーブな子でした。赤ちゃん時代は生きているのか死んでいるのかわからないくらいすごく静かだったらしく、母は私が息をしているかといつも確かめていたとか(笑)。小学校3年のときの担任の先生が美人で柔道をやっていて、そこでたくましい女性に憧れましたね。

 中学3年のときにモデルを経てデビューしこの世界に入り、もうそれからは青春のない時代に突入(笑)。本当は女優ではなく、バレリーナになるのが夢でした。でもバレエはなかなか厳格な世界で、そういう意味では女優のほうがいろんなキャラクターがあって幅広い世界だから面白いとも考えました。

 オーディションに受かり、テレビドラマのヒロインに選ばれたんですけど、芝居が全然できなくてダメで。撮り終わったときプロデューサーから「女優はやめたほうがいい」と忠告されました。私もそう思ったんですけど、次の仕事がすでに決まっていて「これ終わったらやめよう」と。するとそれが終わるとまた次が決まっていてという具合で、なかなかやめられなくて。そのうち芝居が面白くなってきたんですね。それで「まぁ、やめなくてもいいか」と(笑)。18才のとき、この世界で生きていこうと決めたんです。


6才のときのバレエの発表会
(左から3番目)

 女優の面白さに目覚めるきっかけになったのは映画「キネマの天地」(山田洋次監督・86年公開)。何ヵ月も続く撮影の間、「自分てなんだろう?」「なんで演技が伝わらないんだろう?」という決着のつけようもない悩みにとらわれました。いまでは自分をプロデュースする感覚を持てているけれど、当時はまだどうしていいのかわからなくて。でもその一方で、人から影響を受けたりして揺れ動く自分が楽しかったのも事実ですね。とにかく映画を作ることって、すごく奥深いことなんだと感じました。ぶきっちょな自分なりに、「きっとこの世界には何かがあるんだ」と、どこか希望が見えてきたんです。

いろんなイメージを出せる


バレエの発表会にて

 自分とちがうキャラクターを演じるのって楽しいですね。たとえば小説を読んで、世界に浸っている感じ。その人物は私自身ではないけれど、私だったらこう演じてみると考えてみるんです。

 私って古風なイメージが強いみたいで、そういう役を多くいただいてますね。どこかはかなげで、“日本の耐える女”みたいな役(笑)。元気な女優さんはたくさんいたけれど、こういうひっそりしたキャラクターはあまりいなかったんじゃないかしら。いまでは何をやっても私のなかではできる、説得力をもって演じられる自信はあります。従来のイメージだけでない、もっといろいろなイメージを表現していきたいと思っていますね。

母親役でハッとさせられた

 監督さんによっては、言葉なしでわかり合えてしまうこともあります。今年公開された映画「許されざる者」の三池祟史監督とは、ほとんど演技説明なしで演じました。監督は「有森さんには説明しなくていいから」と言い、撮影のときは「ここはダーッという感じで演ってください」と私におっしゃる。私も「はい」と演じる。以後すべて「ダーッと」でした。監督とは余計なことをあまり話さないんですけど、ダーッと言われれば、感覚で監督の言わんとすることがわかってしまうんですね。周囲からは「なんで“ダーッ”だけで伝わっちゃうんだ?」と不思議がられているけれど(笑)。

 最近ではお母さん役も多くなってきました。子どもを産んだことがないから、想像の世界で演じるわけですけど、ときに子どもの一言でハッとさせられることもありますね。もし本当に母親だったら当たり前と感じるような子どもの言葉でも、私にはすごく新鮮に響く。子どもにすごく教えられることが多いなって感じます。

社交ダンスの楽しみ


NTV「ウリナリ!!」
芸能人社交ダンス部大会にて

 8年間ブランクがあったクラシックバレエも再開し、その一方で社交ダンスも始めました。社交ダンスの面白さはクラシックバレエとちがって、ペアで踊るところ。相手によって踊りが二乗になったり、反対にマイナスになることもある。バレエは型が決まっている芸術で、どこの公演を観ても衣裳や音楽などは大体同じ。でも社交ダンスはすべてオリジナルで踊るので、人と比べようがない面白さがありますね。今年は舞台が多いので、踊る時間もなかなか取れないとは思いますが。

 去年の私のテーマは「精神的かつ生活レベルでの自立」。だから今年のテーマは、自立に加えて「学習の年」かな。発散する年ではなくて、自分の引き出しをあけて整理していく、肥やしにしていく年にしたいです。「プライベートの時間が取れなくてたいへんですね」と言われますが、私、ペースを掴んでしまえば意外と自分の時間を見つけて楽しめちゃうんですよ(笑)。

(東京都港区南青山(株)スペースクラフト・エンタテイメント(事務所)にて取材)





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