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146号 注目の人 メルボルン大学准教授 ジョン・ベンソンさん

21世紀のオーストラリアと日本を考える
ジョン・ベンソンさん

アジアの中のオーストラリア

 オーストラリアと日本は同じアジア地域にありますが、歴史、文化、習慣など、大きく異なっています。このことは、新婚旅行で、あるいはビジネスでオーストラリアを訪れた方は気づかれたことでしょう。

 近代オーストラリアはイギリスの犯罪者植民地として幕を開けました。

 その当時、オーストラリアに住んでいた先住民のアボリジニは、2万年前に北アジアからオーストラリアへ移住してきたモンゴル系民族の末裔でした。

 近年、世界中からオーストラリアへの移住が増え、現在のオーストラリアの人口の4分の1は海外で生まれた人たちで、その多くはアジア諸国の出身です。食べ物、言語、宗教、伝統にこれら国際色豊かな多文化社会の性格が、強く反映されています。

両国の貿易


 オーストラリアと日本は非常に異なっていますが、長い交流と協力の歴史を持っています。ここ50年間にオーストラリアと日本の貿易が驚くほど盛んになりました。

 オージービーフ、メリノウール、鉄鉱石、オーストラリアワインも日本向けの輸出品として知られています。オーストラリア人にとって、トヨタ、ヤマハ、ホンダ、ソニーというブランドは馴染み深く、生活に密着しています。

オーストラリアの真珠と米

 十九世紀の終わりころまでに、日本人はオーストラリアで真珠と米の生産を進めました。日本人は、この産業を発展させるために必要な知識とそれを成功させる決意とを持ってオーストラリアへやってきました。今日、オーストラリア西部のブルームでは、この日本人の直系の子孫たちが伝統的な方法で真珠採りをしています。

戦時下の尊厳

 太平洋戦争の間、オーストラリアと日本の関係は、両国民にとって悲劇でした。しかし戦時下にあっても、人としての尊厳を忘れなかったいくつかの美しい話があります。


 シドニー攻撃で、2人の日本軍特殊潜行艇操縦士が戦死しました。そのときオーストラリア海軍は、この2人の日本軍人の勇気をたたえ、シドニー湾で、敵としてではなく同じ軍人として海軍式礼葬により弔い、さらに遺体を東京へ移送してくれたのです。

 この返礼として、日本政府もオーストラリア人捕虜全員に特別休暇を与えたのです。

「スシは何語?」多文化社会オーストラリア

日本食と日本語
20世紀後半には、オーストラリアの将来がアジアにかかっていることを人々は理解するようになります。アジアからの移民が増え、アジアの言語、中でも日本語の人気が高まりました。今日、オーストラリアは、日本語を学習する人が世界で1番多い国となりました。日本食も人気があり、私の大学でもすし屋が2軒入っていて、私の住むメルボルンには日本の食材専門のスーパーマーケットや日本食レストランがあります。オーストラリアの家庭では、日本食を取り入れた食事をよくします。例えば、寿司をオードブルに、パスタをメインに、果物とアイスクリームをデザートに、という組み合わせです。


英語になった日本語

多くの日本語が辞書の中に入っていて、ゲイシャ、キモノ、テンプラ、スシという言葉はその中のほんの1部です。こういう言葉がオーストラリアではあまりにもよく浸透していて、これがどこの国の言葉か知らない人も多いということです。私の学生の1人が、私が日本に何年か住んでいたことを知っているので、日本人はスシをなんと呼ぶのか聞いたことがありました。この学生はスシが英語系の言語だと思っていたのです。


 私の大学の職員専用食堂では、英語のフィッシュアンドチップスというメニューが、テンプラと改称されていす。つまりオーストラリアの人にとっては、日本は百年前に比べ、もはや異文化ではなくなっているということです。

21世紀の両国の関係

オーストラリアは気候も良く、十分な広さを持つ国なので、日本人が退職後、スポーツ、レクリエーション、文化活動をするのに適しています。交易はしたがって、今後は物品よりも人の生活全体の交易となるでしょう。オーストラリアの医療施設や広範な教育サービスも、今後日本人を多くひきつけ、老後の生活を送る候補地となるでしょう。

多様性の理解

オーストラリアの多様な人口構成が意味するものは、寛容に物事を受け入れる姿勢がオーストラリアの日々の生活を形作っているということです。 全てを受け入れなければいけないといっているのではありません。そんなことをしてもすぐにうんざりしてしまうでしょう。 鯨は捕獲されるべきではないと思いますし、日本人の友人もカンガルーを食用にすべきではないといっています。

 大切なのは、21世紀の日本とオーストラリアのパートナーシップは互いに理解し合い、ちがいをすすんで受け入れようという姿勢の上に構築されなければいけないということです。 このことは私たちにとって重要であるだけでなく、オーストラリアと日本の次世代の人たちにとっても重要なのです。


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