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本音のエッセイ

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300号 介護・暮らしジャーナリスト 太田 差惠子さん

親の介護は「想定の範囲内」?

介護・暮らしジャーナリスト 太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト 太田 差惠子さん

太田 差惠子/介護・暮らしジャーナリスト

介護・暮らしジャーナリスト。NPO法人パオッコ理事長。20年にわたる取材活動より得た豊富な事例を基に、「遠距離介護」「ワークライフバランス」等の視点で新聞・雑誌・テレビなどで情報発信。講演実績も多数。著書に、『70歳すぎた親をささえる72の方法』など。

 仕事と介護の両立に悩む人が増えています。両立策をテーマに自治体や企業でのセミナーで話をすることが多いのですが、ここ数年、男性の参加者も増えています。

 セミナーに来てくださった男性から、しばしばこんな声が聞こえてきます。「僕の親の介護を妻に頼んでも『ムリ!』って言われそう」。そうそう「介護は女性の仕事」の時代は終わったのです。少子高齢化で夫婦2人に親が4人!

 こうして、男性も含め、どのように「親の介護」と向き合うべきかという話を真剣に聞いていただくこととなります。

 どの会場でも、皆さんが大きくうなずいてくださるところはだいたい共通しています。

 どんな内容だと思いますか?

 仕事と介護の両方が難しくなってきたときに、「ナラバ、仕事を辞めよう」という考え方は危険だという話。

 こんな事例があります。Aさん夫妻は夫の母親と同居。母親が要介護状態になりました。夫は会社員。妻はパート勤務。母親を日中一人にさせておくと昼食の用意もできないため、妻がパートを辞めました。夫の母親のこととはいえ、夫が離職すると食べていけなくなるため、妻が辞めることにしたのです。

 しかし、妻にとってパートはやりがいのあるものでした。辞めて自宅で義母と向き合う生活になり、その閉塞感からか気持ちがふさぎ、次第にウツ的状態に。心療内科にかかることとなり、現在服薬治療しています。

 仕事を辞めて介護に専念してもうまくいかないこともあるのです。別居の親元にもっと頻繁に出かけたいと離職した結果…、「時間はできたけれど、実家に通っていく交通費負担が厳しくなり、たびたび行けなくなった」と嘆く声を聞くこともしばしば。

 多くの方は、普段は「親の介護」のことから目を背けがち…。「そのときが来てから考えよう」と。が、その日は突然やってきます。心づもりがないから、「こりゃ、たいへん!」と離職に突き進んだりしてしまうのですね。介護離職者年間10万人などという深刻な数字もあるので、誰にとっても他人ごとではありません。

 親が倒れたとき、「想定の範囲内」と言えるくらいになっておくことをおすすめします。「想定」し、どういう社会的サービスがあるのか情報収集しておけば、いざというときに冷静に行動することもできます。

 いつかは、自分にもやってくる老後。成り行きまかせでなく、戦略を持って対峙していきたいものですね。

 

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