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本音のエッセイ

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297号 さとみの漬物講座企業組合 理事長 新関 さとみさん

お母さんの味を次の世代に

さとみの漬物講座企業組合 理事長 新関 さとみ

さとみの漬物講座企業組合 理事長 新関 さとみさん

新関 さとみ/さとみの漬物講座企業組合 理事長

1963年、横浜市生まれ。95年山二醤油醸造に嫁ぐ。2000年より漬物の販売を始め、01年秋より、ケーブルテレビ山形にて「さとみの漬物講座」を放映。レシピ本も発刊され、大好評を得る。07年、全国商工会議所女性会「第6回女性起業家大賞」特別賞受賞。東北では唯一の入賞者。 

 私は今、山形のお母さんの味の漬物を伝えるための漬物講座を実施しています。私がこの仕事を始めたのは、30代半ば。子どもがまだ1歳のころでした。講師として会場にお伺いするとアシスタントだと思われ、「もっと貫禄のあるおばあちゃんが来ると思ってた」と言われました。当初30代から40代の子育て中のお母さんのために講座を始めたのですが、実際は定年退職後に漬物作りに興味を持ち始めた、50代から70代までの女性が断然多かったので、自分よりずっと年下の人が講師とは、こころもとなかったのでしょう。

 横浜生まれの私は、父のUターンで幼少時に山形県天童市に移り住みました。

 田舎がいやで東京で大学とOL時代を過ごしましたが、28歳のときに私自身もUターン。季節感のない東京から戻り、山形の自然の素晴らしさ、食べ物のおいしさに感動しました。

 31歳で嫁いだ先は、山形市の田園地帯にある昭和2年創業の山二醤油醸造でした。

 義母は近所で漬物名人といわれており、「いいところに嫁いだな。ああ、幸せだな」と食を楽しんでいました。私は、野菜を買って食べる家庭に育ったので、出荷状態の野菜しか見たことがありませんでした。根っこや土のついたままの野菜をすばやく処理して作ってくれる漬物に感激。義母の味付けのセンスと漬け方の違いに驚きました。

 5年目にして、やっと子どもに恵まれました。女性は子どもが生まれると根付くというのでしょうか。漬物を、それまでは食べるだけでしたが、夫が母の味に喜ぶ姿を見て、わが家の味を受け継ぎ、自分の息子に食べさせたいという気持ちが強まり、義母から少しずつ漬け方を教えてもらうようになりました。

 一生漬物は漬けないと思っていたのですが、実際に漬けてみると、考えていた以上に簡単で、調味料や道具もあまり必要ありません。単純な話、塩、砂糖、酢さえあれば、手に入るどんな野菜でも漬物にすることができるのです。素材と調味料との組み合わせで、いろんな漬物が生み出されます。「ビギナーズラック」の言葉通りで最初は結構うまくいき、「なるほど!これはおもしろい」と漬物の魅力にはまっていきました。

 少しずつ慣れてくると失敗もします。そのときにもらう義母のアドバイスがすごく的確でした。都度都度感動していると、「こんなこと、至極当たり前のことだ。みんな知っている」と一笑に付されました。母たちの世代や、田舎では当たり前のことですが、私たちの世代や都会では全然当たり前でなく、これが分からずに「私には、漬物は漬けられない」と挫折する人が多いのではないかと少し感じました。

 私だってできたのだから、みんなにこの知恵を伝え、伝統の味を絶やさない仕事がしたいと思い立ち、「漬物講座」を考え付きました。義母から「おれ(わたし)の知っていることをすべて教える。何でおまえがイチイチおれの言うことに驚くのか分からない。これがポイント、これは一般常識と仕分けられるのはもともと初心者だったおまえしかいない。全面的に支援するから」と言われ、二人三脚で始めた仕事でした。知恵を持つ義母と発信する私のコラボがあってのことだと思っています。

 今では、漬物だけではなく、手作り味噌、郷土料理と母世代の方から教えてもらった技を現代風にアレンジしながら、若い世代にお伝えしています。核家族化の進むこの世の中では、意識して伝えていく姿勢が大切だと実感しています。


 

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