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279号 エッセイスト 大前 伶子さん

リアル・ニューヨーク

エッセイスト 大前 伶子

エッセイスト 大前 伶子さん

大前 伶子/エッセイスト 

横浜・捜真女学校卒業後、丸紅株式会社勤務。1965〜1985年丸紅勤務のご主人とともにニューヨーク在住。86年〜91年東急トラベルニューヨーク支店にてVIP専属ガイド。92〜99年銀座で和食店の経営。中央区の政治モニター。月刊誌数誌にコラム連載中。教育関係、旅行の講演多数。

 半年ぶりに1人でNYへ来た。5年+5年、通算10年住んだNYは里帰りの気持ちになる。

 地下鉄とバスに1週間乗り放題29ドルのカードを買って思い出のあるところへ。今回は77丁目のパーク・アベニューに住む友人宅に泊まっているので、地下鉄はすぐ眼の前から乗れる。⑥番の地下鉄でバッテリー・パークへ。最南端から、自由の女神がトーチを掲げているのを見ると、涙が出るほど懐かしい。スタテン島行のフェリーに何度乗ったことだろう。『NY恋物語』で描かれたこの島はあの田村正和さんの当たり役だった。

 スタテン島へは、着いたら引き返すお手軽観光に重宝したフェリーだが、妙に恋心をかき立てる風情。今ではまだ、この島のマンションはマンハッタンより安いので、若い人たちがたくさん住んでいる。それに比べて、マンハッタンの物件は、私が住んでいたときから比べると4倍、5倍に値上がりしている。

 NYで40年不動産の売買の会社を経営している友達とランチしながら、この辺の事情を聞いてみた。カーネギーホールの前に新しいマンションが建築中で60階建の最上階はロシア人が20億ドルで買ったそうだ。

 幸せってなんだろう?マンハッタンはその小さな島の中でしっかり住み分けが決まっている。お金持ちの子どもは学校も年に5万ドル掛かる私立校へ。父兄の顔も品があり、着ているものも犬の品種も違う。一番違うのは住まい。どんなにいい学校に行っても、住所でその人の生活状態が分かってしまう。日本でもその傾向はあるが、ここまで顕著に出る、ある意味怖いところだ。それ故みんな頑張っていい学校へ行き、会社設立にしのぎを削るのだ。

 帰国前日、久しぶりにアメリカン・バレエを観にリンカーンセンターへ。『ロミオとジュリエット』は人気の出し物で満員だった。バレエ大好きな私なので、大いに堪能。帰る日の午前中、これも久しぶりにメトロポリタンミュージアムへ。世界一の埋蔵量を誇るこの美術館はとても大らかで、写真も撮らせてくれるし、観覧料も「御心のまま」と但し書きがあった。マディソン街の店は見るだけだが、心の栄養になった。

 激動のマンハッタンに住んでいたとき、元気で飛び回っているときは、なんて素晴らしい元気をもらえる街だろう、とウキウキするが、ひとたび風邪でもひいたら、何でこんな街に住んでいるの?ともっと何倍ものエネルギーを取られてしまう。今では年に数回旅行者としてお客さまになるのが、心地良いという心境になりながらNYを後にした。

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