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本音のエッセイ

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264号 政治ジャーナリスト 細川 珠生さん

女性の目線で支援を

政治ジャーナリスト 細川 珠生

小説家 千田 佳代さん

細川 珠生/政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。1995年『娘のいいぶん〜ガンコ親父にうまく育てられる法』で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。現在、ラジオ日本『細川珠生のモーニングトーク』に出演、品川区教育委員会教育委員、星槎大学非常勤講師など務める。著書『自治体の挑戦』ほか。

 「防災頭巾がないんです」「いくつですか?」「6人分なので、6個。明日の入学式で使いたいので、今日中に何とか集めたいのですが…」—私が教育委員を務める品川区のある小学校の校長先生から受けた電話で、被災地の子ども6人が通うことになったその小学校で、その子たちの防災頭巾がないことが分かった。入学式を翌日に控えた日のお昼ごろのことであった。

 今日中といっても、あと数時間。すぐに取りに行ける近所の息子の友人宅に何件か電話したところ、わずか2時間余りで6個の防災頭巾を確保することができた。今年幼稚園を卒園したばかりの娘のために作った手作りの防災頭巾もあった。「思い出の品でしょう?」と聞いても、「娘にも、『人のためになることだから』と言えて、私も娘もうれしい」と言ってくれた。「ほかのものは必要ないの?例えば、靴とか化粧品とか鏡とか。子ども用に絵本や塗り絵とかはどう?おもちゃも必要でしょう?」と、女性ならではの、母親ならではの視点から、思いつくことを、みなすごい勢いで提案してくれる。私も、家で不要になった子どものおもちゃや絵本の行き場を探ってはいたのだが、行政を通じて提供するのは、4 月に入ってからも、紙類やお水、乾電池、カイロなどに限定されていた。いくら消耗品といえども、ほかにももっと必要なものもあるのではないかという発想にはならなかったようだ。

 被災地ではボランティアの活動が制限されているように報道されてきたが、実際には、さまざまなNPOやグループが救援物資の提供などの支援を行ってきたようだ。避難所に直接渡しに行く彼らは、被災者の多様なニーズを把握し、物資の提供を呼び掛けていた。私が確認したいくつかのグループの代表者はすべて女性。「とりあえず」の措置的な救援ではなく、当事者の身になって考えた救援ができるのは、やはり女性の強みなのかもしれない。避難生活といえども、生活に関わることは、圧倒的に男性より女性の方がその視点を持っている。

 しかし、不幸なことに、被災者の生活再建策を考えているのは、ほとんどが男性諸氏である。放射性物質に関わる危険情報も、乳児ではなく、小学校低学年までの小さな子どもは、どの程度の生活なら大丈夫なのかという情報発信がなく、母親たちはずいぶん悩んだのである。子どもの将来への責任は親が担っている。だからこそ、的確に判断したい。しかし、母親の目線にたった対応は、政府からはなされなかった。母親である女性の意識、パワーやネットワークを侮ってはいけない。


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