Wendy-Net トップページ > 本音のエッセイ > BackNumber > ものまねタレント 江戸家 小猫さん

本音のエッセイ

BackNumber

232号 ものまねタレント 江戸家 小猫さん

「自然に学ぶこと」

ものまねタレント 江戸家 小猫

ものまねタレント 江戸家 小猫さん

江戸家 小猫/ものまねタレント

1949年東京生まれ。玉川学園卒業後、父・猫八に付いて修業をする。1981年放送演芸大賞受賞。2004年文化庁芸術祭優秀賞受賞。「笑いがいちばん」(NHK)、「真打ち競演」(NHKラジオ)、映画「かあちゃん」(市川崑監督)などにゲスト出演。現在、「文化」「健康」「環境」などをテーマに全国で講演活動中。


 ウグイスの鳴きまねの腕を磨くために山に出掛けて20年余。特にここ十数年はかなり回数が増えて、はじめのうちは「ご苦労さま」と送り出してくれた家族も、「またですか」に変わってしまった。それも無理のない話で、今年の初夏だけでも、西表島、奄美大島、天売島、飛島、戸隠高原、三宅島と続けば、致し方がないところだろう。今やウグイスだけでは飽き足らず、数多くの野鳥のさえずりのレパートリーを増やそうとアチラコチラと飛び歩いている。力強く響くカッコーの声、ツキヒホシホイホイホイと個性たっぷりのサンコウチョウ、コロコロコロととろけるようにさえずるアカショウビン。これらの鳥たちの醍醐味は、実際に山で聞いてみないことには分からない。

 そうして山や草原を歩いていると、自然から学ぶことがそれこそ山とある。まずは、何といっても自然の中に佇む心地よさ、その素晴らしさ。風の音、小川のせせらぎ、鳥のさえずり。自然の中の音以外、何も聞こえてこない。まさに至福のとき。といっても、今日の文明社会に決して文句があるわけではない。むしろその恩恵に被ってありがたいと感謝をしている。

 しかしながら、山に入って、ただ黙々と歩いて、そんな中で感じるのは、日ごろの我々の毎日が何と便利で豊かで贅沢なんだろうという思いだ。自然の中の動物たちを見ていると、全く昔と変りのない、質素な毎日を送っている。生きていくための水と食べ物、ほんの小さな巣。ほかに求めるものは何もない、本当に謙虚なものだ。

 それを思うと、人間だけがなぜか急ぎ、突っ走っているように思えてならない。しかも、その人間の走り過ぎる開発のおかげで、昔と変わらない野山の動物たちのささやかな生活すらも脅かされている。現に今年は、どこに行っても野鳥のさえずりが少なく、生態系の乱れを素人の私でさえも感じる。あらゆることをリードしてきた人間の行いが、自然環境に対して大変な負担をかけてしまったことは、動かしようのない事実だ。

 今こそ、生物多様性の大切さを自覚するときだろう。山で学んだ鳥たちのさえずりを、たくさんの人に聞いてもらって、自然の大切さをこれからも訴えていきたいと思っている。


BackNumber

(無断転載禁ず)