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本音のエッセイ

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212号 俳優・タレント イッセー尾形さん

「無礼を通していく」

俳優・タレント イッセー尾形

俳優・タレント イッセー尾形さん

イッセー尾形/俳優・タレント

福岡生まれ。1971年より芝居を始める。1981年「お笑いスター誕生」で金賞を獲得。1992年 桃井かおりさんと二人芝居を始める。1993年には海外公演スタート。2003年9月 市川準監督作品映画「トニー滝谷」に主演。映画・テレビ・CMなど活躍中。主な著作は、『遊泳生活』(角川書店)、イッセー尾形『正解ご無用』(中央公論新社刊 エッセー集)など。





 2006年は、デビュー25周年記念ということだった。まるで他人事になってしまう。何事もそうなのだ。33年をともに活動するスタッフは「それで良い」、「それだから創作がここまで続いている」とおおらかに見てくれる。54才なんですけど、私。

 通常の社会的行為、行儀、礼儀が全く身に付かない。デビュー当時は、少しは頑張ってお付き合いしようとした芸能界の方々にも「はぁー?」とあきれ顔のトンチンカンはずい分とあったらしいが、もう今となっては「あぁ、そうゆう人なんじゃない?」と締めくくっていただいていると聞く。

 どうだろうか、そんな自分が、果たして作品を創ってさえいれば、そんなに大手を振って無礼でいいんだろうか、と不安になることはもちろんあるけれど、何事も事が起こってしまった後に、スタッフに説明されて、あぁそうなのか、と納得する。正に後の祭りだらけなのだ。例えば、お世話になった方をこちらがご招待する席で、いつもあまり酒席で楽しくなさそうな僕の態度をスタッフが予測して「無理しないで良いよ」と前もって言ってくれたりすると、「失礼します」と突然その席を立って帰ってしまったりする。後でスタッフは「何か失礼なことでもしましたかネー」と気遣われるお相手に、何とも説明のしようもなく困り果てるのだという。それもあまり実感が持てないのが正直なところだ。だって「無理しなくて良い」って言ったじゃあないか、と。僕の側からは、なぜ「お世話になった」返礼として酒席になるのかが、どうしても分からない。お相手のお気に召すかどうかは知らねども、たとえ不器用であったとしても、僕に出来ること、作品を創ってそれを観ていただくことこそが「お礼」をすることじゃないか、と、どこかで頑固に思っているのかもしれない。

 今までの25年間失礼だらけだったのなら、もうこれからも死ぬまで礼儀知らずに社会のハンパ者の立場で作品創りをしていくしかないだろう。「どうしてお父さんはそうなの!!」「お父さん恥ずかしいっ!!」と泣きべそかいていた娘たちも成人し独立して、そう言ってくれる人がいなくなるのが1番寂しい。

 だから頑張って誰かに「みっともないっ!」と言われるためにも無礼は通していくつもりだ。


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