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188号 スポーツキャスター 荻原 次晴さん

「滑る側にも責任が!!」

スポーツキャスター 荻原 次晴

スポーツキャスター 荻原 次晴さん

荻原 次晴/スポーツキャスター

1969年群馬県生まれ。幼少のころから双子の兄・健司とスキーを始め、2人で切磋琢磨しノルディック複合で日本を代表する選手となる。1998年長野オリンピックでは個人6位、団体5位と入賞を果たす。引退後はスポーツキャスターとして活躍するほか、講演会やノルディックスキーのツアーを企画するなどして普及活動を行うとともにその楽しさを伝えている。著書に「次に晴れればそれでいい」(TOKYO FM出版)などがある。


 スキーシーズン真っ盛り、僕の季節である。今年も仕事に支障をきたさない範囲で滑りまくりたい。僕は趣味でサーフィンもする。昨日はサーフィン今日はスキー、なんてことも冬になるとよくあることだ。僕にとってこの2つ以外に楽しいと思うスポーツにまだ出会っていない。

 僕のスキーはテレマークと言って板から踵が離れることで歩くことや坂を登ることもできる、いわゆる山岳スキーである。ゲレンデを滑ることもあるが主には手つかずの冬山だ。動力に頼らず自分の足で何時間もかけて登ってたどり着いた山頂はなんとも気持ちがいい。そして一気に滑り降りる。そのわずかな快感を求めて旅をするのだ。

 そんな楽しいテレマークだが、山に入る前には天気予報を必ず確認し、雪崩の危険がないか雪質のチェックをする。万が一のために体には電波発信機を装着する。そして、もちろん初めて入る山には地元のガイドに案内してもらう。安全に対する準備に「やりすぎ」はない。スキー場の不備などにより事故が起きることは残念だが、滑る側が注意を払っていれば防げた事故もあると思う。例えば若者たちの禁止区域エリアでの滑走。遭難などの問題が起こっても携帯があるから大丈夫と危機感のない者が多すぎる。

 数年前、スイスで誰もいない山を勢いよく滑っていったとき、目の前に現れたのはなんと崖だった。運よく気が付き止まることができたがそのままの勢いで滑っていたら…。命拾いした瞬間に思ったことは「なんでこんな危険なとこ滑走禁止になってないんだよ!」。しかしその後、リフト降り場の近くに「この先危険、滑走禁止」ときちんと書かれた小さな看板を見つけた。そのとき「そうか、スキーってのは本来、自分の安全は自分で作るんだよなあ」とあらためて思った。僕もいつのまにか、サービスに対してわがままになってしまっていたのかもしれない。そして、そんなことをサーフィンを始めてからよく考えるようになった。

 サーフィンで波に乗るためにはまず、波に何度も何度も押し戻され苦しい思いをしながら沖に出なくてはいけない。反対にスキーはリフトに乗れば初心者でも山頂に行ける。さらにリフトに乗るよう誘った仲間が先に滑って行ってしまうこともあるのだ。海では大波を前にして初心者を誘う人はまずいないし、流されたり事故に遭っても文句を言う人はいない。

 スキーは本来、自然の中のスポーツで、ときには危険も付きまとう。場合によっては危険なんだよということを頭の中に入れて楽んで欲しい。社会生活から開放され、滑って自由になるために、雪山に責任も一緒に持っていってもらいたい。


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